1.TQMとは何か?
この章では、TQM(Total Quality Management:総合品質管理)の意味を明らかにしよう。
1-1.TQCからTQMへと進化はウソ
巷では、1960年代にTQCがファイゲンバウムによって日本に導入され、1990年代に競争力強化の戦略的な品質管理であるTQMに移行した、との話がまことしやかに伝わるが、これ全くのウソ話である。
Google検索で「TQCとTQMの違い」と質問すると、AIの回答は次の通りである。
TQCとTQMはどちらも品質管理の手法ですが、TQMはより広範で「組織全体での品質向上」を目指す「経営戦略的なアプローチ」です。
他方、TQCは「製造現場における品質管理」に重点を置いた活動を指します。
簡単に言うと、TQCは「現場での品質管理」に重点を置いた活動、TQMは「組織全体で品質向上」を目指す経営戦略という違いがあります。
つまり、TQCは技術部や製造部が行う、いわば「規格品を設計・製造する活動」であるが、TQMは「消費者が要求する製品やサービスを作る活動」であるため、営業・製品企画・資材なども参画する、という意味である。
では、TQC時代に使われた「JIS規格」や日本規格協会の「TQC用語辞典」を調べてみよう。全くの間違いであることが分かる。
品質管理とは、買い手の要求に合った品質の物又はサービスを経済的に作り出すための手段の体系(JIS Z 8101 G2)。
「買い手の要求に合った品質の....」とあるから、TQC時代にあっても品質管理は「組織全体が参加する活動」であったことが分かる。のみならず、当時は別名として、全社的品質管理CWQC(Company‐Wide Quality Control)とも呼ばれたほどである。
次は、Google検索で第1位に出る「スキルノート」というサイトの解説を見よう。
TQCとTQMの違い
TQMには「マネジメント」の考え方が入っていることからも、TQCと比べてより経営層に重きを置いた概念と言えるでしょう。バブル崩壊後、グローバル化や科学技術の発展などますます変化の激しい時代となり、「経営層のリーダーシップ」が強く問われているのです。
とは言え、TQMにおいても製品の品質に従業員全員が関わっていることには変わりありません。TQMはTQCを否定するものではなく、TQCを土台にして時代にあわせて発展した形だと理解するのがいいでしょう。
「経営層に重きを置いた概念」というが、結局のところ、具体的にどこが違うのか、さっぱり分からない。
次は、Google検索で第2位の「THE OWNER」というサイトの解説を見よう。
TQCとの違い
TQCとTQMでは、品質管理の主体に大きな違いがある。TQCは、主に現場の従業員一人ひとりが主体的に品質管理を行う活動だ。一方でTQMは「組織運営を実現する活動」、「経営全体での」という表現が示すように経営陣がトップダウンの形で品質管理を行うものである。つまりTQCの考え方を経営陣の業務にまで拡大したものが「TQM」と言えるだろう。
ここで、TQCは、主に現場の従業員一人ひとりが主体的に品質管理を行う活動だ。
と言っているのはQCサークルのことを指している。そして、経営陣がトップダウンの形で品質管理を行う
と言っているのはTQCの方針管理のことを指している。
しかし、これら両方ともTQCで扱っているのであって、結局、TQM と TQC は全く同じだ、ということ以外に何も出てこないなのである。
1-2.池澤辰雄氏(早大名誉教授)の話
池澤辰雄氏は、1986年~1987年に品質管理学会の会長を務めた方である。
当時の日本は世界の「品質管理大国」であって、日本の学者は全世界から招かれて講演を行った。池澤氏もその一人であるが、米国で講演をした時に「これが日本のTQCだ」と説いても、米国の学者たちはどうしても受け入れなかったそうだ。
QCサークルや方針管理の話をすると、それは "Control" ではなく "Manage" だよ
と言って譲らなかったそうである(本稿の筆者が直接にご本人から聞いた話)。
QCサークルの自発的・自主的・自己研鑽、相互啓蒙・モチベーションなどの要素は「人心操縦」であってマネージメントである。米国人にとって、人をマネージするのはいいが、コントロールするのは「犬、猫扱い」にすることで、到底許容できる用語ではないのだ。
〔参照〕Control と Manage の違いについて → 管理とは?
その結果、池澤氏は、「TQC」という日本流の呼び方を「TQM」に変える必要を感じた訳だが、この「改名の必要性」を世間にどう説明するか悩んだ。まさか、「英語の知識が乏しいから TQC と呼んで来たが、間違いだと分かったから TQM に改名する」とは口が裂けてもいえない。
そこで学会として協議し、「時代に合わせて進化」という「あいまいな口実」を作ったのである。
最後に残った疑問がある。日本に TQC を持ち込んだのはゼネラル・エレクトリック社のファイゲンバウムという米国人ではないか!英語にたけた彼が「TQC」と呼んだのが始まりなのに、なぜ "Control" で間違いなのか?
「ファイゲンバウムの TQC」には、「QCサークル」(石川肇氏が創設者)が含まれていなかった。つまり、TQC は日本で運用されている間に性格が変わってしまったのである。
1-3.品質とは?
いまさら「品質」の意味を尋ねられても「考えたこともない」という人が多いと思うが、ちゃんと定義がある。
品質とは、品物又はサービスが、使用目的に適しているかどうかを決定するための評価の対象となる固有の性質、性能の全体(JIS Z 8101)。
同じことを分かりやすく換言すると、品物又はサービスを評価する事項は(値段、重さ、デザイン等)いろいろあるが、そのうち「使用目的に適しているかどうか」という評価事項を「品質」という。
そんな難しいことを言わずに、普通に「品物又はサービスの良さ」でいいのでは?と思うのが人情だが、学者は次のように考えたと思われる。単に「品物又はサービスの良さ」だと、次の点で困る。
- 「良さ」も「悪さ」も評価だから、「良さ」のみを品質の定義に織り込むことはできない。
- 「値段の割には良い、悪い」と、価格の要素が紛れ込む恐れがある。
安全性の点でも、「幼児がいじるなら危険」だが訓練された「専門家が操縦するなら安全」だという具合に、「使用目的」を考慮する必要がある。しかし、「納期が遅くても、機能や寿命に不満でなければ良い品質」と評価すべきであり、「品質は他の要素を排除して評価すべきだ」という趣旨である。
1-4.品質管理とは?
「品質管理」について、JIS に定義がある。これを合理的に解釈して意味を明確にすることにより、問題が見えてくる。
1-4-1.JISが定義する品質管理
品質管理とは、買い手の要求に合った品質の品物またはサービスを経済的に作り出すための手段の体系をいう(JIS Z 8101)。
この定義で重要なところは、次の文言である。
- 経済的に
- 作り出す
- 買い手の要求に合った品質
次に、これらの意味を解説する。
1-4-2.「経済的に」とは、QDC一体管理のことだ
私は若いころ、この意味を「安いコストで製造すること」と解釈した。理由は、費用をかけて品質を良くするのは誰でもできるから、「いかにして安く良品を作るか」という問題を解決するのが品質管理の役目だと考えるのが、一応、理に叶っていると思えたからである。
しかし、そのうち疑問を持ち始めた。「待てよ?いくら安く良品を作っても、納期に遅れ、製造中や使用中にケガを負い、環境汚染を起こすようではまずいなぁ」という疑問である。
すると、この「経済的に」というのは、「研究のために作る」とか「趣味で作る」というのではなく、「経済活動として」環境・安全・品質・納期・コストを考慮して作ることだと理解することができた。
これは、いわゆるQDC一体管理の原則を意味する。すなわち、次の事項を、「この順に優先して」、「同時・一体に管理」しなければならない。品質だけを管理するのは、品質管理ではないのである。
- 環境保護
- 安全
- 品質
- 納期
- コスト
さらに、上の5つ管理事項には「優先順位」がある。
- 環境保護と安全は、「公益」だから最優先である。
- 「私益」のうち、お客様の利益「品質Q」が最優先する(品質第一主義と呼ぶ)。
- 次にお客様の利益「納期D」、
- 最後に生産者の損失「コストC」が来る。
- 値段(Price)は売買契約で定まる事項なので、管理対象ではない。
〔トップペーの問題(1)〕
1.製造部門は、次のうち、どれを管理しますか?
品質Q・納期D・コストC・安全S・環境E
2.資材部門は、どれを管理しますか?
解答(1)
- 製造部門は、販売部門の要求に合った品質の製品を、納期内に、安価に、安全と環境を害さずに製造しなければならない。
- 資材部門は、製造部門の要求に合った品質の資材を、納期内に、安価に、安全と環境を害さずに調達し、提供しなければならない。
1-4-3.「作り出す」とは、検査・選別ではない意味
「作り出す」は、いわゆる品質を「作り込む」と同義である。製造品質の品質管理は、その製造を担当する作業者や監督者が「品質を作る」行為を指す。
昔は、品質管理とは「検査をして、不良品を選別・排除すること」を意味した。
しかし、今は、「検査すること」は品質管理ではない。他人の仕事振りや結果を検査して、問題点を報告する活動を「品質保証」QA(Quality Assurance)という(→ 後述:品質保証とは?)。
品質保証を専門に担当する部署を(通常は)品質保証部と呼ぶ。この部署を「品質管理部」という名称にする企業もあるが、それは品質管理と品質保証を混同した結果である。
1-4-4.「買い手の要求に合った品質」とは?
次工程お客様とは、どの業務も「相手が要求する品質」の品物またはサービスを提供しなければならないとする原則を言う。そして、これをもって、TQC時代のJISの定義がTQMを意味していることが分かる。
営業部門が「買い手の要求に合った品質」の品物またはサービスを提供するためには、製造部門が営業部門に対して、その要求に合った物を提供しなければならず、その為には設計部門も製造部門に対してその要求に合った設計を提供しなければならない。
従って、TQM(総合品質管理)とは、「次工程お客様」を実現するために、全員参加で、品質(Quality)・納期(Delivery)・コスト(Cost)・安全(Safety)・環境保護(Environment)を総合的かつ一体に管理・改善する組織的な活動、と定義することもできる。
1-4-5.管理とは?
「管理とは、...」と定義文を掲げたいところだが、その前に断って置かねばならないことがある。実は、日本語ではいずれも「管理」であるが、英語では "Control" と"Manage" という意味の異なる用語に分かれるのである。
- Controlは、思い通りに支配すること(=制御)。
- Manageは、思い通りならないことを、何とか「やりくりして切り抜ける」こと(=経営)
この比較を見れば、JISの品質管理の定義が、"Quality management" を扱っていることが分かる。
1-4-6.品質管理部という部署名はダメ!
以上、「品質管理」の意味を解説して来たが、実際に世の中をみると、「品質管理部」という名称の部署を設けている企業がある。さらに、製造部の中に「品質管理課」・「品質管理係」という名称の部署を設けている企業もある。
「それは、おかしいよ」と指摘しても、「成程、そうか」と応じてくれる企業はほとんどない。「いや、課内に品質管理をする人間がいないと困る」と言って譲らない。「全員が品質管理をするのだ」と説明しても、納得しない。
メルクマールとして、次のように理解すればよい。
- 環境・安全・品質・納期・コストに問題が起きないように、品物またはサービスを「作っている」か「作ることを命令している」のであれば、品質管理である。
- 品質に問題が起きないように、品質に関する事項のみを調査し報告しているが、直接に品物またはサービスを「作っている」訳でも「作ることを命令している」訳でもないなら、品質保証である。
〔注146〕1つの製造課の中に品質管理係・納期係・原価係・製造係などを設けている企業も現存し、一見して「品質・納期・原価は、別々に管理されている」と誤解されがちである。
しかし、正しくは、製造工程に対して命令権があるのは課長だけである。他は課長に対して情報を提供する補佐役であって、製造工程を管理している訳ではない。従って、「品質管理係」という名称の部署は、正しくは課内の「品質保証係」である。
1-5.品質保証とは?
「品質管理」と紛らわしいのが「品質保証」である。
まず、JISの定義から。
品質保証とは、消費者の要求する品質が十分に満たされていることを保証するために、生産者が行う体系的活動(JIS Z 8101)。
いや~、さっぱり意味が分からない。「保証するために何をするのか」何も書いていない。
次は、ISO 2000の定義
品質保証品質要求事項が満たされるという確信を与えることに焦点を合わせた品質マネジメントの一部(ISO 2000 3.2.11)。
いや~、これもさっぱり意味不明だ。「確信を与えるために何をするのか」何も書いていない。このような「さっぱり意味の分からない学者先生方の独りよがり」が、この分野の衰退を招いている。
以上の「品質保証」という用語の意味を解明するヒントは、次に説明する「意外なところ」に転がっている。
1-6.ISO「管理責任者」の規定は誤訳
ISO 2000に「管理責任者」の規定がある。
5.5.2管理責任者(Management Representative)
- トップマネジメントは、管理者層の中から管理責任者を任命すること。
- 管理責任者は与えられている他の責任とかかわりなく、次に示す責任および権限を持つこと。
- (a)QMSに必要なプロセスの確立、実施及び維持を確実にする(Ensuring)。
- (b)QMSの実施状況及び改善の必要性の有無についてトップマネジメントに報告する(Reporting)
- (c)組織全体にわたって、顧客要求事項に対する認識を高めることを確実にする(Ensuring)。
この規定の原文に、上記の "Ensuring", "Reporting" が使われており、品質保証の定義規定でいう「保証する」とか「確信を与える」等の意味、内容を示している。
つまり、品質保証とは、顧客が要求する品質を満たすように規定類が整備され、それに従った仕事をしているか、その結果はどうか、調査して関係部門・経営者・顧客等に報告することである。
従って、このISO 2000 の「管理責任者」という日本語は誤訳であって「経営者代理人」と訳すのが正しい。
"Management Representative" に「管理責任者」の意味は全くない。正しくは、次の通りである。
- "Management" は「管理」ではなく、ここでは「経営者」の意味。
- "Representative" は「代理人」の意味。
- 職務の内容から見て、日本では「品質保証部長」に該当。
つまり、経営者が「品質に関する規定類」を調べたり、現場に出向いて「仕事振り」や「仕事の結果」を調べて歩く訳にいかないので、代わりに「品質保証部長の職務」として調査・報告させることにしたのである。
2.各種のTQM活動
前章で、「品質管理」の意味が明瞭になった。
すなわち、品質管理とは、買い手の要求に合った品質の品物またはサービスを経済的に作り出すための手段の体系をいう(JIS Z 8101)。
品質管理を実施するには、何をする必要があるか、これがこの章のテーマである。それを考えるには、従来(TQM導入前)は「どうしておったか」、「何が問題だったか」から吟味していこう。
2-1.日常管理
日常管理は「経営管理の最も基本的な活動」であり、特に「日本におけるTQMの導入」によって激変した。
2-1-1.TQM導入前の活動
TQM導入前の活動は、部長・課長等による日常管理しかなかった。彼らを「管理職と呼ぶ風習」は、ここに由来する。
〔注211〕
日常管理とは、日常業務(それぞれの部門が本来なすべき分掌業務)を効率的行うための管理活動をいう(日本規格協会:TQC用語辞典)。
TQM導入前の「部課長による日常管理」の中身は、納期に遅れないための「日程・進捗管理」で占められた。品質管理の考え方も、現在とは違っていた。当時は、品質管理といえば、「検査をして不良品を選別する」ことによって「客先に不良品を渡さないようにする」ことだった。従って、「品質管理を勉強する」ということは、「いかに少ない検査作業でロットの合否を判定するか」という「抜取り検査の理論」を勉強することであった。
次に、この「出来上がったものを検査する品質管理」から、「規格に合った物を作る工程管理」に重点が移り、シューハートの管理図・工程能力指数による工程の品質管理が行われた。
そこに登場したのが、米国のゼネラル・エレクトリック社のファイゲンバウム (Feigenbaum, A.V.)である。彼は、品質管理は規格に合った物を作ることではない。買い手の要求に合った物を作ることである。そのためには、全工場的な参加が必要である
と唱えた。これが「TQCの始まり」であり、今日我々がTQMと呼ぶ「総合品質管理の初期の姿」である。
2-1-2.管理職による日常管理の問題点
- 不良品の発生が慢性化し、改善が進まない
- 営業部門や資材部門が考慮するのは納期とコストだけで、品質は技術部門の仕事だと思っている。
(1)課長1人では力不足
製造課長が一人で、製造課内で起きている諸々の問題を把握し、対策を検討して改善するなどという活動はできるはずもない。
(2)QDC一体管理の崩壊
製造部門が自身の不良問題に手をこまねいているのに、そこに資材部門が不良品が混ざったロットを受け入れて製造部門に供給することが日常化した。
資材部門は、次工程の製造部門に不良品が混ざっていないロットを供給する職務がある。従って、つぎの日常業務を行わねばならない。
- 調達品の「受入検査の実施」
- 品質に問題があるときの「調達先への指示」
受入検査は品質管理ではない。しかし、受入検査の結果を根拠に、調達先に対して必要な指示をする権利が(契約上)あり、これを駆使することは品質管理に該当する。
営業部門については、次の通りである。
- 出荷品の「出荷検査の実施」
- 品質に問題があるときの「製造部門への指示」
出荷検査は品質管理ではないが、その結果を根拠に、前工程である製造部門に対して(社内規定上)必要な指示をする権限があり、これを駆使することは品質管理に該当する。
以上のようなことを説明すると、非常に多くの人が、次のように反論する。
へえ~っ!営業や資材の事務員が検査するんですか!?
誰もそのようなことは言っていない。検査課に検査を依頼すれば済むことである。
実は、従来もそうであった。検査課は受入検査や出荷検査、それに製造部門の工程中検査を、検査課の自身の職務として担当しているのではない。それぞれの部門で検査すると人員や設備の重複が生ずるので、1ッか所に集中して検査課にまとめて、各部門からの依頼で検査するようにしたものである。
そこで登場するのが、1962年の石川馨氏(東京大学教授)による「QCサークルの導入」である。
QCサークルがQCという名称を持ちながら納期・コスト・安全・環境に関する改善も扱うようになっているのは、このQDC一体管理を推進するためである。
2-2.QCサークルの導入
日常管理を担うQCサークルの「始まりから衰退まで」の経過を追ってみよう。
2-2-1.QCサークルとは?
1962年に雑誌「現場とQC」において石川馨氏がQCサークルの導入を呼びかけたことが始まりと言われている。その後、日本科学技術連盟が中心となって全国に普及し隆盛を極めた。
QCサークルとは、同じ職場内で品質管理活動を自主的に行う小集団をいう(日本規格協会:TQC用語辞典)。日常管理を行うために、同じ職場に設けた数人の「第一線の担当者」から成る小集団である。人数の多い職場なら、人数を適宜に分割して複数のサークルを設置する。
QCサークル活動(以下、QC活動)は、日常管理の「小改善」を扱う。小改善は「費用をあまり掛けず、失敗したら元に戻せる活動」なので失敗が許され、それ故に「CAPDサイクル」を繰り返して「七転び八起」で改善を進める。
小改善とは、失敗を覚悟して行う改善活動をいう。多くは「費用をあまり掛けず、失敗したら元に戻せる活動」であるが、小規模とは限らない。例えば、米国の「大陸間弾道ロケット」や「月面着陸のアポロ計画」で行った実験は、1回に付き1~2兆円もかかったが、「失敗してもやむを得ない」と覚悟して行った活動だから小改善である。小改善は、PDCAサイクルを回して行う。
PDCAサイクルとは、実施計画(Plan)→実施(Do)→結果の点検(Check)→対策案の検討(Action)→計画に戻る、を繰り返すフィード・バック手順(Feed-back procedure)をいう。「確実ではない手段」を試しに実施してみて、得られた結果の情報をもって手段を是正して再度試行する作業を繰り返す。
QC活動では、「現状の悪さ加減」の把握(Check)→対策案の検討(Action)→試行の計画(Plan)→実施(Do)→現状の把握(C)となる場合が多く、これを「CAPDサイクル」という。
大改善とは、失敗が許されず、「必ず成功する」との確信の下で行う「一発勝負の活動」を言う。多くは「莫大な費用を要する」か、「人の生命に関わる」か、「失敗したら元に戻せない」活動である。しかし、大規模とは限らない。例えば、我々の日常生活では、失敗しても1万円の損害でしかない買い物でも、入念に調べて、確信が持てなければ買わないことが多い。しかし、失敗しても100円の損害なら、「まぁ、失敗してもいいや」と、気軽に試そうとする。これは小改善である。
一発勝負とは、失敗が許されない活動において、本番を実施する前に「確実な手段を研究して」、この情報を利用して本番に臨むフィード・フォワード手順(Feed-forward procedure)をいう。
「QC活動の目的」は、次の通りである。
- 自己啓発(自分の学習)
- 相互啓蒙(情報交換で相互に学び合う)
- QC手法を活用した日常管理・改善
改善事例発表会は、「相互啓蒙のために行う」のであって、「自ら学んだこと」、「他のサークルの参考になりそうなこと」を発表しなければならない。評価も「経営者による審査」ではなく、「サークル間の投票」で行うのが正しい。
ここで問題なのは「QCサークルは自主的に活動すべき集団か?」という点だ。自主的に(Independently)とは、自分が主人であって「誰からも干渉を受けずに」という意味である。1960年代のQCサークル本部の綱領によると、同じ職場内で品質管理活動を自主的に行う小グループのこと、と規定されており、現在でも「自主的」が正しいと考えて指導する人が多い。
しかし、日常管理は、本来、管理職の仕事である。課長の指示を無視する「自主的集団」を課内に設けることはあり得ない(同旨・2007年、名古屋地裁判決:トヨタ堤工場事件)。
2-2-2.QCサークルの衰退
QCサークル2000年頃から衰退が始まった。その原因は、日本科学技術連盟による指導の誤りにある。QCサークルを育生したのも殺したのも日本科学技術連盟であろうと筆者は考える。「QCサークル衰退の主な原因」は,次の通りである。
- 自主的(Independant)な活動とし、管理職の指揮が及ばない活動と位置付けた。
- その結果、管理職は日常管理を放棄し、QCサークルのウソ話作りは制御不能に陥った。
- CAPDサイクル(七転び八起)で行うべき改善活動をQCストーリー(一発勝負の手順)を守るよう指導して、ウソ話の発表会を推進する結果となった。
- 改善事例を経営陣が審査して褒めるよう指導し、誤った審査とウソ話を褒める審査に導いた。
2-2-3.QCサークルの復活
しかし、QCサークルは管理職と協力して正しく活動する限り、「日常管理の推進役」として大変に有益である。→QCサークルの進め方/活性化を参照して下さい。
QCサークル推進委員会を設置するのも一つの道である。
QCサークルを指導し、指揮・監督するのは職場の課長である。ここでいう「QCサークル推進委員会」は、全社的に小集団活動の状況をチェックし、問題点と改善案を報告する監査機関である。委員は、小集団活動の正しい姿を知る者に限る。従来のような「ウソ話を作る活動」しか経験しない者は不適格である。
例えば、次のような問題点と対策案をまとめて品質管理委員会で報告する。
- ウソ話を作っている。
- 問題が発生しても、手を付けない。
- 多数の問題があって、着手は1件のみ。
- 課長が無関心で指導しない。
- サークルに有能なメンバーがいない。
- 多忙でサークル活動ができない。
上のような問題を放置したまま「やれ!」と旗を振っても、「やった素振り」を招くだけである。
2-3.機能別管理
機能別管理とは、全社的立場から、品質・コスト・納期などの機能別に計画を立案し、各実施部門の日常管理・方針管理を通して実施し、実施結果を全社的立場から評価し、必要なアクションを取っていく管理活動をいう(日本規格協会:TQC用語辞典)。
各職場における環境保護・安全・品質・納期・コスト等の管理を「各職場の自由」に任せるのではなく、「全社的な立場で」計画し、評価し、改善する活動である。
「実施」は各職場の担当であるが、「管理」は機能別委員会が担当する。日常管理が役員→部長→課長→係長~という「縦割り構造」であるのに対し、機能別管理は「横割り構造」である。機能別委員会の構成例として、次のようなものがある。
- 安全-環境委員会
- 品質保証部
- 納期委員会
- 原価委員会
「機能別管理」という名称は、「実施」は各現場が担当し、「管理」は管理部門が担当する~という考ええ方に由来する。
しかし、この考え方には疑問がある。
例えば、品質管理は、経済的に「品質を作り出す」ことであって、決して計画し評価するだけで「実施は他部門だ」という関係にない。「管理」というためには、環境保護・安全・納期・品質・納期・コストを同時一体に(分離せずに)「自ら作り出す」必要がある。
しかし、実施ではなく、単に計画し評価するだけなら、環境保護・安全・品質・納期・コストを同時一体に扱う必要がない。つまり、「機能別管理」といいつつ、「管理」とは異質な活動であって、むしろ「監査」である。
単純に云えば、こうだ。モノづくりを実行するなら、環境保護・安全・品質・納期・コストを同時に考慮する必要があるが、他人が作るのを見るだけなら別々に見ても構わない~ということである。従って、機能別監査(Functional audit)と呼ぶのが正しい。
以上の理由で、品質の機能別監査を担う品質保証部を「品質管理部」と呼んではならない。品質管理部という名称の部署が存在すると、「品質管理は品質管理部が担当する」と誤解されるからである。
2-4.方針管理
方針管理(Policy Management)とは、組織体において、経営目的を達成するための手段として制定された中・長期経営計画、あるいは年度経営方針を体系的に達成するための全ての活動をいう。多くの場合、年度経営方針に対して用いる(日本規格協会:TQC用語辞典)。
2-4-1.伝統的な方針管理
上の定義では、何を言っているのか、さっぱり分からないから、以下のような説明を追加されることが多い。
経営環境の変化が激しく、毎年同じことをすればよい~という時代は過ぎた。トップ方針の下、全社が一丸となってその達成を図るニーズが増大している。
企業規模が大きくなり、トップ方針を示しただけでは、それぞれの部門が何をなすべきか鮮明でない。例えば、トップが「安全第一」という方針を出したとき、現場では「高所作業における命綱着用の徹底」という具合に具体化しなければならない。
伝統的な方針管理は、要するに、トップの方針を組織の末端まで行き渡らせ、「末端において、為すべきことを具体化する活動」である。
2-4-2.戦略的な方針管理
戦略的な方針管理とは、経営革新の手段を開発するプロジェクトにおいて、「方針の選定」、「ビジョンの表明」、「目標の設定と実現」の失敗を回避するため管理をいう。
〔注242-1〕
方針(Policy)とは、磁石の針を意味し、進む方向をのことをいう。
ビジョン(Vision)とは、手段の有無を問わずに望まれる未来像を言う。単なる願望であって、実現手段の有無を問わない。
目標(Target)とは、的(まと)を意味し、特定の手段を使う場合に狙うことのできる対象を言う。手段が特定しなければ目標も定まらない。
経営者が長期方針で表明するのはビ設定して年度ジョンであって、通常、手段は特定しない。長期方針は、いくつかの具体策を研究開発するための方針であり、年度方針として具体策と目標が特定される。
経営環境の激しい変化に備えるためには、経営革新(Innovation)を実現する手段(隠し玉)を持たなければならない。喩えるなら、国際的な紛争でいつ戦争になるとも限らない状況では、いざというときの強力な武器がないと敗戦の憂き目にあう。そこで、今までにない強力な武器を開発して備えれば有力な防衛手段になる。
しかし、それには莫大な予算を費やさねばならず、失敗が許されない。失敗は、次の3つに分かれる。これらの失敗を回避するための管理が「戦略的方針管理」である。
- 方針の間違い
- ビジョンの間違い
- 「目標設定の誤り」と「達成の失敗」
失敗を回避する仕組み誤りは、長期計画で研究開発を行って確実な手段を得て、その成果を利用して本番の年度計画を立案することである。
〔注242-2〕下に示すような解説に注意を要する。長期・中期・短期という区分は、単に期間の長短や具体化の程度による区分ではない。長期と中期は、いずれも研究開発であり、短期(年度)は本番の実現活動である。
長期計画と中期計画は、企業の経営計画において重要な役割を果たす計画です。長期計画は、企業の長期的なビジョンや目標(例:10年後のあるべき姿)を定めるもので、中期計画は、長期計画を達成するための具体的な行動計画を3~5年程度の期間で定めるものです。短期計画は、通常1年間の計画を指し、中期計画をさらに細分化したものと言えます。
次は、方針管理に関する慶大教授(第54、55年度日本品質管理学会会長):山田秀氏の見解である。
PDCA管理サイクルを発展させると、継続的改善という概念につながります。たとえば最初にPの段階で定めた目標が未達成であったとしても、適切な処置をとることで目標の達成が期待できます。従って、目標レベルを逐次高め、仮に目標が未達成であっても適切な処置をとることで、高度なレベルの目標が期待できます。
方針管理では、組織レベルの方針をそれぞれの部門での目標に展開するだけでなく、しっかりとPDCAのサイクルを回す必要があります。
「適切な処置をとることで目標の達成が期待できる」からPDCA管理サイクルを適用するという山田秀氏の見解は、「適切な処置をとることができない場合の損失を考慮しないから、完全な誤りである。
戦略的方針管理は、失敗が許されない一発勝負である。「100億円かけて本番を実施してみたが、失敗したから、再度100億円かけてやり直す」というPDCAサイクルが許されない活動である。そのため、本番の年度方針の前に長期方針という研究段階の活動を予定し、この研究活動でPDCAサイクルを回すことにしたのである。
これに対し、QCサークル活動は失敗が許される活動であり、本番がPDCA(CAPD)サイクルである。
なお、山田氏が「目標の達成が期待できます」と述べているのは誤りである。長期方針ではビジョンを設定するのであって、手段が不明だから目標は設定できない。目標は、年度方針で設定することになる。
2-4-3.長期方針、長期計画
「長期方針・長期計画」によって、実現すべき内容(ビジョン)の実現手段の研究と調査を行い、万が一にも失敗のない手段を究明し、テーマストックに蓄積する。それらの手段の中から採用すべき手段を選定して年度方針とし、目標を設定して実施計画を立て、実現のための活動をする。
〔注243〕ビジョンは願望であって具体的な手段を知らなくても成り立つが、目標は達成可能性を裏付けるデータ的根拠を要する。従って、長期方針での研究で得られたデータによって年度方針の目標を設定することになる。
目標の関する詳細な解説 → 目標の設定
長期方針・計画
| ステップ | 活動 | 成果 |
| 方針の策定 | 経営陣がデータに基づき経営革新の方向を決める | 向かう方向 |
| ビジョンの表明 | 望まれる着地点と時期を決める | 着地点と時期 |
| 方針展開 | 研究課題、担当、予算~等を決める | 活動の細部 |
| 長期計画 | 活動、担当、納期 | 活動日程 |
| 管理項目の設定 | 管理し評価する項目を明らかにする | 管理項目 |
| テーマストック | 研究成果の整理、記録、登録 | 実現可能な課題と手段 |
2-4-4.中期方針
中期方針は、長期方針に付随する「補助的な研究開発」に関する。例えば、長期方針で「新製品開発」を行う場合に、ある程度の実現可能性が認められた段階で、それに「使用する材料の開発」、「技術人材の育成や訓練」、「販路開拓」といったような研究開発が必要になる。これらに要する期間は、通常、長期計画よりも短く予算も少ないので中期と呼ぶのである。
中期方針、および中期計画の手順は、長期の場合と同様である。
2-4-5.年度方針
(問題8の解答=4.)年度方針では目標を設定しなければならない。
長・中期方針で得られ、テーマストックに蓄積した手段の中から、採用すべき手段を選定して年度方針とし、目標を設定して年度計画を立て、管理項目(例えば、原価、性能など)を設定し、実現のための活動をする。
テーマストックとは、中・長期計画で開発された、得られる結果、実現に要する費用、労力、必要な期間などが明らかにされ、実施を保留している「手段の在庫」をいう。本番の年度計画でどれを実施するか、その選択が年度方針である。
2-4-6.有名な事例
有名な事例として、次のようなものがある。
- 米国の大陸間弾道ロケットの開発
- 米国の月面着陸アポロ計画
- 松下電器(株)の家電開発
- ユニクロ(社長:柳井正氏)のヒートテック開発、販売
松下電器産業(現パナソニック)は、かつて白物家電で一世を風靡した。電気炊飯器、電気洗濯機、冷蔵庫TV、テープレコーダー、その他の新製品を次々に開発してテーマストックに蓄積した。しかし、直ちに製造・販売に踏み切ることはしない。ジッと他社の動きを観察し、他社が販売を開始するまで温めておく。出そろった頃を見計らって、他社よりも優れた機能・デザインの新製品を安い価格で売り出し、一挙に市場を独占する。松下幸之助氏の戦略であった。
2000年代、ユニクロ(社長:柳井正氏)は事業の展開に苦しんだ。「早く失敗して、早く切り替えよ」をモットーに「デパ地下での野菜の販売」など、PDCAによっていろいろな事業実験を返し、2006年に、ついに東レとの共同開発で「ヒートテック」にたどり着いた。
よく見るのは、経営陣が「売り上げ倍増」という方針(この場合はノルマ)を立てて、それぞれの管理職にそれを実現するための目標を立てさせ、経営者が管理職に対して「頑張れ!頑張れ!」と旗を振るやり方である。このような活動は、方針管理ではない。
なお、方針管理の詳細な解説は、方針管理を参照のこと。
3.TQM関連の組織
TQM(TQC)導入前には各部門の日常管理だけであった品質管理活動にTQMの新たな活動が加わるため、組織構成も変わることになる。
3-1.品質管理委員会
- 品質管理委員会はTQMの最高決定機関である。
- 開催頻度は、通常、毎月1回である(他に、臨時開催もあり得る)。
- 参加者については、以下に説明する。
3-1-1.構成
品質管理委員会の構成について概説し、特に重要な委員長人事について触れる。
- 委員長(通常、CEOや社長が委員長)
- 事務局(記録・連絡・広報を担当する)
- 各部門の長(営業部長、製造部長等)
- 機能別委員会の長(品質保証部長、コスト委員長等)
- 方針管理委員長
- (QCサークル推進委員長が参加する場合もある)
ここでの最大の問題は「品質管理委員長は誰が務めるか」である。討議するものの、委員長が最終的な決定権限を持つ。
例えば、次のような事項を決定しなければならない。
- 組織の変更・新設・廃止
- 品質マニュアル規定の変更・新設・廃止
- 部署や委員会の名称や構成人材の変更
- AI技術者の募集、設備の購入など
委員長は全社的な決定権や人事権がなければならず、通常は社長や CEO が務める。
誤った事例として最も多いのは、ISO 2001-5.5.2 の管理責任者の規定を適用して、「管理責任者」が品質管理委員長を務めることである。ISO の「管理責任者」は誤訳であって、日本でいう品質保証部長のことである。
〔参照〕→ISO 2001 管理責任者
3-1-2.社長が事務系の場合
「品質管理は技術系の者が担当すべきだ」と誤解される場合がある。
品質管理委員長が(機械、電気、電子、化学のような)技術の知識を求められ、あるいは技術を用いて問題を解決することを求められるケースは皆無であり、技術とは全く関係がない。にもかかわらず、先入観で「品質問題=技術問題」と思い込んでいる場合がある。
デパートの店員は、顧客からの品質に関するどんな質問にも答えるように指導される。営業マンは当然、自分が担当する商品の品質についてあらゆることを知って説明できなければならない。また、自動車のセールスマンは驚くほど自動車の知識を持ち、顧客からの質問を受けるために技術部の設計陣を同伴することはない。技術を説明したり問題を解決する業務でない限り、技術者が担当することはない。
社長は、事務系かどうかに関係なく、自社が扱う商品やサービスの品質に詳しくなければ「品質第一」を維持することは困難である。ただし、自ら技術を駆使できる必要はない。
次のような事項は、事務系の品質管理委員長の腕の見せ所である。
- 営業の品質管理の推進
- コスト・納期の問題
- 品質クレーム撲滅の方針管理
3-2.機能別委員会
品質・納期・コスト・安全・環境保護に関する各専門の調査機関を設け、組織横断的な調査を行って品質管理委員会に報告する制度である。
通常、次のような組織を設置する。
- 安全委員会
- 環境保護委員会
- 品質保証部
- 納期委員会
- 原価委員会
組織横断的な監査組織
| 機能別監査機関 |
安全委員会 |
環境委員会 |
品質保証部 |
納期委員会 |
原価委員会 |
| 監査を受ける部門 |
↓ |
↓ |
↓ |
↓ |
↓ |
| 営業部門 |
安全 |
環境 |
品質 |
納期 |
原価 |
| 製品設計部門 |
安全 |
環境 |
品質 |
納期 |
原価 |
| 生産技術部門 |
安全 |
環境 |
品質 |
納期 |
原価 |
| 資材部門 |
安全 |
環境 |
品質 |
納期 |
原価 |
| 倉庫輸送部門 |
安全 |
環境 |
品質 |
納期 |
原価 |
必要に応じて、次のような委員会を設ける。
3-3.品質保証部
品質に関するものだけを「品質保証部」という常設の部署にして、他は委員会組織にする場合が多い。品質に関する仕事量が多く日常的に監査が必要だからである。
品質保証部のことを品質管理部と呼ぶのは、品質を管理する部門であるかの如く誤解を生じるので止めるべきである。品質保証部は、安全委員会などと同じように各部署の品質に対する取り組み状況を監査し報告する機関であって品質管理をする部署ではない。
同様に、製造課の中に品質管理係という名称の部署を設けるのも望ましくない。
製造課に属する人員のうち、品質管理を行う者は次のとおりである。
- 製造品の品質を管理するのは、製造品質を生み出す「作業者」と指示をする権限を持つ上司(部長・課長・直上の係長)である。
- 上の品質管理に必要な検査、調査、指導、報告、その他の作業を担当する係は(品質管理係ではなく、「課内品質保証係」である。
- 同様に、課内に設ける納期を管理するのに必要な調査、連絡、催促、運搬、報告などの作業をする部署は(納期管理係ではなく、正確には)納期管理補佐係であって、納期管理をしているのは権限のある課長、部長である。