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第1章 QCサークル 発表事例


このページで述べること

発表会の風景

1. QCストーリーは、QCサークルのために用意された手順ではない。
 → QCサークル用の手順ではない
 → 

2. QCストーリーに従って活動し、QCストーリーに従って発表する~という古典的なQCサークルは廃止して、CAPDサイクルに従って活動しよう。
 → 問題2

→ 正しい活動・発表手順

3. このページで、ある問題解決型の発表事例を取り上げ、それがいかにひどい間違いか、問題点を浮き彫りにする。しかし、課題達成型の活動であっても、問題になる点は同じである。

特に,日本科学技術連盟、医療のTQM推進協議会などによる誤ったQCサークル指導に注目しよう。

このページで浮き彫りになった問題点を、第2章~第11章で解決しよう。


本田宗一郎氏の思想

本田技研の創業者である本田宗一郎氏は、一つの形にはまったパターン化した考え方を嫌い、自由な気質・形態を尊重する思想の持ち主でありました。

本田宗一郎

1971年当時、日本科学技術連盟がQCサークルを提唱し、全国的に展開していました。本田技研は、これを参考にQCコンテストと称する製造部門中心の事例発表会を開催したことがありました。しかし、盛り上がりは必ずしも充分ではなかったようです。

こうした型通りの活動は、本田宗一郎が望んだ自由な気風にいま一つそぐわず、新しい活動の方法が模索されました。本サイトは、まさにこの趣旨に沿ったものです。

まずは、一つのQC改善発表事例を見てみよう。


目次
1. 発表事例の検討
1)テーマの選定
2)選定の理由
・発表会の目的
3)活動の計画
4)現状の把握
5)目標の設定
6)要因の分析
7)対策の実施
8)効果の確認
2. まとめ
1. 疑わしい点
2. 最も重要な欠陥
参照医療TQM
参照福祉QC

1.発表事例の検討

ある企業の改善事例を紹介しよう。
 事例を検討すれば、いろいろな問題点が見えてくる。以下の事例発表を拝見して、何が浮かび上がるだろうか。
 いざ、出発。

→ 目次
製品D

1-1.テーマの選定

「製品Dの曲がり不良の低減」を選定しました。製品と不良品の状況は右の図に示す通りです。

活動テーマか、発表テーマか

選定するのは「活動テーマ」か「発表テーマ」か、この第一歩で誤りを犯している。

なぜなら、「発表テーマ」は各サークル一個の制限があるから選定するのは当然だが、「活動テーマ」は一個だけ選定して他を放置するのは日常管理としておかしいからである。

今から発表しようとするテーマを紹介するのだから「発表テーマの選定」でなければならないが、次の説明を見れば、それが違うことが判明する。

→ 目次
多くの問題

1-2.選定の理由

私たちの職場は他にもいろいろな問題を抱えていますが、緊急性、効果の大きさ、全員参加などの観点で、このテーマが最も活動に適すると判断しました。

選定

1.活動テーマの選定理由

この表に「活動テーマ」を一個だけ選定した理由が示されているが、これだと「他のテーマに良い対策案があっても、手を付けてはならん」と制限したことになる。
 これは日常管理で許される考え方であろうか?

われわれはトラブルを複数抱えたとき、何だかんだと理由をつけて一個に絞ることはしないのが普通である。
 例えば、頭痛と腹痛と指のケガを負ったとき、一個だけ選ぶことはしない。また、新製品の量産を開始して3項目の不良が発生したら、3項目とも解決するよう努力するべきである。

一般家庭の主婦の掃除を例にとってもそうだ。家庭の主婦は、夫の部屋、長男の部屋、次男の部屋が散らかっているとき、いずれ全部を掃除する。沢山の理由を並べて長男だけ選定し、他は放置するのは異常である。

さらに不思議な点がある。そもそも小集団活動の目的は、次の3つであるとされている。

発表会の目的は、上のどれだろうか?

→ 目次

2.事例発表会の目的

事例発表会の目的は何か?
 それは相互啓蒙である。サークル間の情報交換として「参考になる事例」を選ぶべきなのに、本件の選定理由は、この点が全くの考慮外である。

この事例は「発表テーマ」を選定せずに「活動テーマを1個に決めて、それを発表する」というやり方である。それだと、次のように困ってしまうはずだ。

1. その選定した一個のテーマに手を付けて、もし失敗だった場合、発表をどうするのか? 「失敗しました」と正直に発表するだろうか? ところが、「失敗」と発表する事例はゼロ件である。
 なぜだろうか? 恥になるし、怠慢だと非難されかねないから。

2. 毎年1テーマを選んで発表することを繰り返すと、「発表テーマの在庫」がないから、「発表テーマを選ぶ」ということが出来ない。

3. しかも、毎回発表が義務づけられているから百発百中でなければならず、「1回たりとも失敗してはならん」という、とてつもなく厳しい制約になる。

4. すると、「ウソ話の発表」にするか、or 成功すると分かっているテーマしか扱わない習慣となるはずであり、現にそうなっている。

 → 複数テーマのメリット

→ 目次

1-3.活動計画

11月の事例発表会に間に合わせるため、9月で終了するように計画した。

全員参加が重要なので、ステップごとに主担当を決めて、主担当を中心に皆が協力する体制をとった。

活動計画

偽物の計画

この計画は「発表の直前に作成した偽物」である。「このように進む」と予言し、そして「予言通りに進んだ」と主張していることになるからだ。

活動テーマを選定した時点では、不良の原因が判明するものやら、よい手段があるものやら、やってみなければ分からないはずである。その状態でこのような「最初から最後までの計画」が立つなら、「すぐれた予言力」があることになる。

QCサークル活動は、カンや予言力を養うことを目的としていない。逆に、カンやハッタリでなく「データに基づいてモノを言う」習慣を養う制度である。

QCサークル活動は、失敗が許される「七転び八起」の小改善であって、目標と計画を必要とする一発勝負とは違うのである( → 第11章 PDCAサイクル)。

→ 目次

1-4.現状の把握

パレート図に示すように、4月度の損失金額は45万円でした。

パレート図

年額に換算すると540万円となり、是非とも削減したいロスであります。

問題点が2つあるように見える。

1.平均値とバラツキが不明

これで現状を把握したことになるだろうか?

現状把握では、平均値(or 合計値)の他、バラツキの状況も把握する必要がある。理由は、次の通り。

〔注〕バラツキを超えた変化のことを「有意差」という。

本件の1か月のパレート図では、バラツキが全く見えない。つまり、4月度の損失金額=45万円は、4月度だけ何か特別な事情があって製品Dの曲がり不良が多かったのかも知れない。

〔推奨〕現状把握や効果の確認には、時系列折れ線グラフ が最適である。平均値とバラツキが同時に可視化されるからである。


2.重点管理は不適切

パレート図を作成したということは、重点管理を目指したことになる。しかし、QCサークル活動に重点管理は適切か?

日常管理では、1個の重点問題に集中して「ゴミや汚れなど、他の小さな問題は放置する」という考え方は許されない。

大きな問題や難しい問題は後回しにして、やさしい問題を先に全部片づけるのが日常管理の正しい進め方である。

〔参照〕→ 第5章:重点管理は誤り

→ 目次

1-5.目標の設定

損失月額の現状45万円を10万円まで低減することを目標に決めた。

目標の意味

そもそも、目標とは、どんな意味だろうか。

普通に考えれば、目標を設定するとは、的を設定して狙うことだ。だが、今は「狙うための手段」を持っていないから、何も狙えないはずだ。

〔注〕
 手段を持っていないのに、自信ありげに大げさな成果を表明することをハッタりという。

だとしたら、この発表者が言う「目標」とは、どんな意味だろうか。

~などのどれかであろう。

「この手を打てば、こういう結果になる」と、既にデータで分かっているなら、狙えるから、目標の設定は可能である。しかし、活動テーマを選定した時点では原因も解決手段も不明であって、示せるのは、せいぜい願望(ビジョン)だけである。

他方、願望なら「不良ゼロ」でよく、何も「損失額10万円」などと中途半端なものである必要はない。審査員の「もっと高い目標が欲しい」との発言は、この願望の意味である。しかし、目標と願望は同じ意味だろうか?

もっとも、願望の意味なら変なことになる。なぜなら、願望が「不良ゼロ」であることは分かり切っているから、「設定する」必要がないからである。目標と願望は区別しなければならない。

予言

目標と願望が異なる意味だとすると、次の検討が必要になる。

〔参照〕 → 第2章 目標の設定

本件の事例では何の根拠もなしに目標を設定し、「予言が当たるかどうか」という宗教問題になっている。品質管理の「データでモノを言え」という大原則に反する。

データ的裏付けのない大げさな目標は、俗にいうハッタリである。

→ 目次
特性要因図

1-6.要因の分析

全員で話し合って要因を特性要因図に列挙しました。もれなく要因を拾えるように、皆でブレーンストーミングを行った。

次に、特に重要と思われる要因3個を選びました。

  1. エアーの圧力
  2. 材料メーカー
  3. 製品の搭載の仕方

影響を検証したところ、いずれも影響力が認められた。

・エアーの圧力は製品に過度の圧力を負荷していると考えられ、最小限度に低くしてみた。これによって加工能率は低下せず、悪影響はない。

圧力 メーカー 搭載

・材料メーカーは、従来のS社のものよりH社の方が少し価格は上がるが、不良損失が減れば支障がないので試すことにした。

・製品をパーツフィーダに搭載する際に「カゴから落下」を「滑りシュート」に変更してみた。

問題が多数ある。

1.多数の要因はダメ

問題を解決するには「要因を漏れなく列挙せよ」と、誤った指導を受けた人は多いと思う。だが、多数の要因を列挙するのは望ましくない。
列挙するのは全ての「要因」ではなく、少数の「疑わしい要因」である。

コロンボ警部

シャーロック・ホームズやコロンボ警部などは、目をつける容疑者の数が非常に少ない。特にコロンボは1人に目をつける。
 無能な捜査陣ほどデータの収集と解析が下手だから容疑者を絞れず、多数の容疑者を取り調べる。

〔参照〕→ 第6章:一つの要因


2.特性要因図の目的

この事例では、特性要因図を作成した目的が不明だ。特性値の「要因」を列挙したいのか、それとも、不良の「疑わしい要因」を列挙したいのか?

「原因ではないか?」と疑った要因は、普段の仕事を通じて判断したのであって、特性要因図を作成したから分かった訳ではないはず。ここが重要な点だ。

つまり、「疑わしい要因」は、最初から次の3つしか頭になく、最初はこれら3つだけ問題にすれば済んだのである。

  1. エアーの圧力
  2. 材料メーカー
  3. パーツフィーダへの供給法

そして、これらが原因ではない、又は、他にも原因がありそうと判明したら、次々に疑わしい要因を追加すればよい。

〔参照〕→ 特性要因図


3.ブレーンストーミングはウソ

最初から上の「3個の疑わしい要因」しか頭にないから、ブレーンストーミングを行う必要がないはずだ。

いろいろやったが解決できずに行き詰まったときに、ブレーンストーミングが役立つ場合があるのは否定できない。

しかし、まだ何もしていない段階でブレーンストーミングによって無数の要因を列挙しても、結局は「捨てるだけ」であってムダである。


4.影響力の検証がダメ

1回作った棒グラフに差が出たからとて、影響力を検証したことにならない。単なるバラツキかも知れない。

例えば、午前と午後の生産品で比較しても差が出るだろうし、女性と男性作業員で分けても差が出る。昨日と今日の生産で分けても差が出る。このような差は単なるバラツキであって、有意差とは限らない。

なぜなら、別の機会(例えば、次の週)に測定すれば結果は逆かも知れないからである

有意差であると主張するためには、「バラツキを遥かに超えた差」があることを示す必要がある。
 その手段として、通常、次のようにする。


→ 目次

1-7.対策の立案と実施


要因 従来の条件 新条件
エアーの圧力 12kg/cm 9kg/cm
材料 A社製 B社製
出し入れ 落下 シュート


単なる偶然の差

次の例のような差は通常「単なる偶然の差」であって有意差とは限らず、有利な方を選んでも効果が出ないのが普通である。

このような偶然のバラツキを要因の影響力とカン違いして対策を講じても、改善効果は出ないのが通常である。

→ 目次

1-8.効果の確認

当初、月額45万円だった損失は、下のパレート図に示すように10月度は12万円となり、33万円の削減となりました。

パレート図

目標達成率は、94% となり、あと一歩足りなかった。今後もさらなる改善を続ける予定です。

target

以上で発表を終わりと致します。

疑問点はいろいろある。

1.単なるバラツキ

効果が確認されていない。パレート図で差が出ても、単なるバラツキかも知れない。そもそも現状の把握の段階からバラツキが把握されていないから、バラツキと改善効果の区別ができない。

2.素晴らしい予言力

発表の内容が真実だという前提に立てば、効果が出た以上は「原因の検証」も「講じた対策」も適切であったと言えるかも知れない。しかし、発表事例の内容は真実とは考えにくい。

驚き

原因がはっきりしないまま講じた3つの対策が功を奏し、「当てずっぽうに立てた目標」が94%達成されたのだとすれば、次のように、ただ驚くばかりだ。

このサークルは、品質管理は全くダメだが、素晴らしい予言力を持ったサークルに違いない。それほど優れた予言力があるならQCサークルなどやめて、是非、国家プロジェクトとして地震予知をやって欲しいものである。

また、中国共産党による台湾進攻、中国共産党の崩壊、~その他、預言して欲しい国際問題が多数ある。

→ 目次

2.まとめ

筆者の信ずるところでは、この発表事例は次のように評価すべきである。

2-1. 疑わしい点

実際に何らかの改善をしたのかも知れないが、全くの架空話かも知れない。少なくも、一部はウソ話である。
 この発表事例の疑わしい点を順に列挙すると、次のようになる。

1)「発表テーマ」ではなく、「活動テーマ」を1個だけ選定している。従って、相互啓蒙の目的が達せられず、ウソ話を奨励する結果になっている。

2)この発表事例の活動計画は、全くの創作である。原因や対策がまだ分からない段階で、最初から最後までの活動を見通して計画を立てることは不可能である。

3)目標の設定は、していないはずだ。「願望」の意味なら「不良ゼロ」となるはずだし、「約束」なら預言者でなければ不可能だし、「狙い」の意味なら狙う手段がなく狙えないからである。

4)そのような対策を講じて、そのような効果が出たのは疑わしい。要因=原因と誤解している。要因であることを検証しても原因とは限らないのに、不思議にも対策を講じて成功している。
 予め実験を重ねて研究し、これらの対策性がデータで分かっているならともかく、何らの根拠もなしに一発で成功するのはおかしい。

5)この発表事例では、効果が確認されていない。単に10月分の損失金額が4月分よりも低いというだけで、バラツキと改善効果の区別が不明確である。

作り話

6)以上の全体をまとめると、こうなる。

ある理由でたまたま選んだテーマに取り組んだら、何をすればよいか分からない時点で全体の活動計画が立ち、原因かどうか不明な3つの事象に対策を講じたら、当てずっぽうに立てた目標がほぼ達成された(予言が当たった)~という話である。

この発表事例は、作り話であると疑うのが自然である。


2-2. 最も重要な欠陥

日常管理としてみた場合、最も重要な欠陥は、CAPDの繰り返しがなく、一発勝負で終わっていることである。

トラブルの原因も対策も分からない状態で活動を始めた場合、一発で問題が解決するのは奇跡である。

改善に成功した場合でも、次の検討が必要である。

  1. もっと良くならないか?
  2. 品質がこれ以上改善できないなら、納期は?
  3. コストは?
  4. 安全は?
  5. 環境性は?

〔参照〕 → 発表の模範例

(終り)
→ 目次


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