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第6章 要因分析・原因解析

シャーロック・ホームズ

このページで説明する事項

  1. 要因と原因の違い
  2. 「単なる要因」と「疑わしい要因」の区別
  3. 要因分析と原因解析の意味
  4. 活動の型
  5. 疑わしい要因の層別

これらは普段、疑問にも思わずに見過ごしてしまいがちな重要問題である。

→ オンライン講習/出張講習


目次
はじめに
(1)一つの要因
(2)重要な要因
(3)重要な要因に対策?
(4)原因解析
1.要因と原因
(1)要因とは
・正しい用語の意味
(2)原因とは
(3)因果関係
2.要因と原因の分析
(1)要因分析
(2)原因解析
(3)QCサークル
(4)ウソ発表の実態
(5)指導例
3.活動の5型
(1)原因確定型
(2)逐次対策型
(3)溜め込み型
(4)課題達成型
(5)施策実行型
4.疑わしい要因の層別
(1)棒グラフで
(2)直交配列表で

はじめに

サークル

このページは、QCサークルで活動している人々に、要因分析や原因解析に役立つ情報を提供します。

小改善だから難しい話は無用だが、多少のコツがあります。そこで、第一線担当者に容易に理解できる範囲で、有益と思われる情報を整理してみます。

上のような趣旨なので難しい割に役に立たない技法は省略するが、見過ごせない誤った指導例を示して、注意を促す方針である。

最初に練習問題で準備体操をしよう。


〔第1問〕一つの要因

→ 目次

QCサークル活動として、ある特性(不良率、原価、工数など)を改善するために、A君とB君が特性要因図を作成した。A君は多数の要因を列挙し、B君は1個の要因しか挙げなかった。

特性要因図の内容はさておいて、要因の数だけを問題にするものとして、どちらが適切か?

A君の特性要因図
(文字は読めないが、要因が多いと分かればよい)羽根田氏の特性要因図

これに対し、B君の特性要因図は要因が1個である。

B君の特性要因図
要因1個

これまでの説明をお読み頂けば、極めてやさしい問題だ。そうです。B君の要因1個が優れており、A君の多数の要因は望ましくない。

その理由は?

A君は、要因を多数列挙して一発勝負で一挙に解決しようと考えており、対策を講じる要因を決めることは至難の業である。

他方、B君は次のようにCAPDサイクルを始めようとしているから適切である。

(C)現状を把握し、
 (A)最も疑わしい1個の要因とその対策を考え、
 (P)対策を決め、
 (D)実施して、
 (C)効果を見て、不満なら、
 (A)二番目に疑わしい要因を挙げ、
 (P)対策を決め、
 ~と、サイクルを繰り返す。

B君は普段の仕事中で「これが原因ではないか?」と疑わしい要因=原因候補をつかんでいて、その1個を特性要因図に記載したに過ぎない。この要因に対策を講じて効果が不足なら、第2番目に怪しい要因を挙げて対策を講じるという具合に、次第に範囲を広げて要因を増やそうとしている。

以上の原因解析のコツをQCサークルに対して指導することが極めて重要である。


〔第2問〕重要な要因

→ 目次

特性要因図を描けば、どの要因が重要か分かるか?

QC活動の事例発表の「要因分析」のところでよく耳にする話であるが、要因を多数列挙した特性要因図を示して「この中の重要な要因はこれとこれ」などと説明する。しかし、特性要因図を作成すれば重要性が分かる訳ではない。重要かどうかは、普段の仕事を通じて知っているに過ぎない。

従って、重要な要因を示したいのなら、最初から「既に知っている重要な要因」だけを列挙すればよいのであって、重要でない要因を列挙するのは「要因を多数列挙せよ」との誤った指導による。多数列挙して、多数捨てるだけの見せかけの特性要因図である。


〔第3問〕重要な要因に対策?

→ 目次

重要な要因に対策を講じれば、効果が出るか?

これも事例発表でよく耳にするが、重要な要因であっても適切に管理されていればトラブルの原因にならないから、「重要な要因に対策を講じたら効果が出た」という話はウソ話である。

正しくは、(重要な要因ではなく)「疑わしい要因」を挙げて対策を講じるべきである。すなわち、普段の仕事を通じて「これが原因かも」と疑っている要因を挙げて対策を講じれば、効果はあり得る。

最初に、一番疑わしい要因に対策を講じ、効果がなければ二番目に疑わしい要因に対策を講じる~という具合に繰返すべきだ。そして、効果が出れば、その要因が原因と確認される。この場合、要因分析をせずに原因解析(分析)だけを行ったことになる。

〔注〕


〔第4問〕原因解析

→ 目次

問題となっている特性(品質項目、コスト、所要時間など)に影響しそうな要因が分かっている場合、要因分析は不要である。原因ではないかと疑っている要因(疑わしい要因)が「果たして原因か否か」を確定する活動が原因解析である。

原因解析は、通常、2つのやり方がある。

  1. 再現実験=ある要因(または要因の組合せ)の設定により事象が再現すれば原因と確定する。直交配列表による再現実験が有効な場合が多い。
  2. 問題の解決=疑わしい要因に対策を講じて問題が解決すれば原因と確定する。QCサークル活動で行う原因解析は、CAPDを繰り返して、改善効果が出た要因が原因と確定する。

以上の準備体操を終えて、本論に進もう。

→ 目次

1. 要因と原因

要因と原因は、同じ意味ではない。

1-1. 要因

 要因とは

要因とは、特性値に影響する事象をいう。影響するかも知れない事象を要因と呼ぶ場合がある。

〔例〕気温は、物の寸法に影響する要因である。

正しい用語の意味
用語 意味・例 犯罪でいえば
要因 気温は寸法に影響する要因だが、適切に管理すれば寸法不良の原因にならない 無数の人(皆、容疑者になり得る)
疑わしい要因 寸法不良の原因と疑われる要因
適切に管理していないかも知れない
容疑者
原因 寸法不良の原因
適切に管理していなかった
犯人

1. 「要因を漏れなく列挙せよ」との指導がよく見られるが、誤りである。「単なる要因」を多数列挙しても、「対策を講じるべき要因」(逮捕すべき容疑者)は全く決まらない。

2. 「重要な要因」に対策を講じたら効果が出た、という話はウソである。「重要な要因」は、通常、管理されており、原因である可能性は少ない。

3. 列挙すべきは「疑わしい要因」、つまり普段の仕事を通じて「原因ではないかと疑っている要因」である。

4. 「疑わしい要因」に対して、行うことは2通りある。
 失敗が許される場合なら、直ちに対策を講じて効果が出れば、それが原因だと判明する(対策先行型)。
 失敗が許されない場合なら、層別や実験などによって原因かどうか判定する。

 指導例

指導例を吟味しよう。

日科技連:細谷克也氏から引用

"要因" とは、結果に関する主要な原因のことです。

この説明は、2つの点で間違っている。

1)要因は「主要な原因」ではあり得ない。なぜなら、原因が分からないのに特性要因図に「主要な原因」を列挙できるはずがないからである。

2)「結果に関する」とは、寸法などの「特性値」を指すのか寸法不良などの「トラブル」を指すのか、意味不明である。正しくは、「特性値」に影響する事象が「要因」である。そして、「特性値異常」に影響すると疑われる事象が「疑わしき要因」である。

→ 目次

 血圧の要因

血圧

血圧の要因を列挙してみよう。

これらは「血圧」という特性値に影響するから「要因」である。しかし「高血圧」という結果に影響しているかどうかは、その特定の患者について調査(原因分析)をしなければ不明である。

これら要因を列挙して何の役に立つのか?

 (1)要因分析

ある要因と思われる事象が真に要因かどうか確認することを、要因検証という。要因と考えられる事象を列挙し、要因であるか否か検証するところまでが「要因分析」である。

高血圧を予防するには、全ての要因を管理すればよい。つまり、健康管理に有益ないし不可欠な情報である(予防のための管理事項)。

 (2)原因解析

ある患者が高血圧症であるとき、原因を調べるには、これら要因の全てを列挙するのではない。これらのうち、この患者に該当する「疑わしい要因」を列挙する。

その人が運動不足であれば、「疑わしい要因」(原因候補、容疑者)になる。しかし、まだ原因(=犯人)とまでは言えない。

  1. 運動を開始して血圧が正常になれば、運動不足が原因(犯人)であったと確定する(対策による原因確定)。
  2. 運動を止めたら再度高血圧に戻った場合、原因確定度が高くなる(再現による原因確定)。

この「疑わしい要因」を列挙し、原因を確定することを「原因解析」という。


1-2. 原因

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原因とは、現に悪い結果を発生させた事象(犯人)をいう。別の表現をすれば、「事象Aがなかったら事象Bもなかった」という因果関係において、事象Aを原因という。

原因は現在・過去の事象について言うが、要因は現在・過去・将来を問わない。


1-3. 因果関係

→ 目次

次に、どうであれば「発生させた原因」と言えるか?

ティーカップ

雑談を兼ねて、ティー・タイムにしよう。

因果関係

やくざの親分Aと一人の子分Bが、親分宅で何やら血相を変えて怒号し合っている。子分Bが足を洗いたいと願い出たが、親分AがOKしないのだ。

ヤクザ

そのうち親分Aが包丁を持ち出して子分Bを殺しにかかった。

Bはたまらず屋外に飛び出して逃げたが、親分Aは頭に血が上って、包丁を持ったまま追いかけた。子分Bが慌てて街路に飛び出したとき、運悪く通りかかったトラックに跳ねられて死亡した。

トラックの運転手Cは、特に何の法律違反もしていなかった。子分Bが急に飛び出したために跳ねられたのであって、Cはごく普通に運転していた。親分Aは結局、包丁を使わずに引き揚げた。

問題は、親分Aが何の罪に問われるか、考え方によって意見が分かれる。

1)親分Aは殺人未遂罪~とする説:
 包丁を使わなかったから殺人行為はなく、子分Bを殺してもいない。ただ、殺す意思で追いかけたから殺人未遂になる。

2)親分Aは殺人罪~とする説:
 死亡したのだから未遂はあり得ない。親分Aが包丁を持って追いかけなければ、子分Bの死亡もなかった。従って、因果関係が認められ、親分Aは殺人罪である。

結論をいうと、判例、通説ともに親分Aは殺人罪である。

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2. 要因分析と原因解析

これらは似たような用語であるが、正確に区別しよう。

 

2-1. 要因分析

→ 目次

要因の意味が分かれば、要因分析の意味も分かると思う。そう、次の2つである。

要因分析は、何が要因なのかを調べる活動である。そして、この要因分析は小集団活動でも極めて重要な活動だされているが、本当にそうか疑問がある。要因であると検証できても、「原因である」という検証にはならないからである。

例えば、こうである。

従って、単に特性要因図に要因と思われるものを多数列挙して、「重要と思われるもの」に対策を講じたら効果が出た~という発表は、ウソ話だと思ってよい。


 疑わしい要因

→ 目次
容疑者

私たちは、よく、「不良の特性要因図に要因を列挙する」という言い方をする。しかし、「不良の原因かも知れない」という意味で列挙するなら、単なる要因ではなく「原因ではないかと疑っている=疑わしい要因」を列挙するのが正しい。

「単なる要因」を列挙するなら要因分析だし、「疑わしい要因」を列挙するなら原因解析であって、似ているようで全く違う活動である。一口に「要因」といっても、意味が同一でないことに注意しよう。


特性に影響する事象 → 要因分析
疑わしい要因 → 原因解析

誤った指導を受けたQCサークルは、多数の「単なる要因」(関係者)を列挙する要因分析用の特性要因図を作成する。つまり、「特性に影響する事象は、これで全てに違いない」という特性要因図である。これを作っても、どの要因に対策を講じたらよいか、定まらない。

実は、この特性要因図は、実験計画法で実験によってトラブルを再現する場合に適するやり方であって、QCサークル向きではないのである。

正しい指導を受けたQCサークルは、少数の「疑わしい要因」(容疑者)を列挙する原因解析用の特性要因図を作成する。つまり、「これらのどれかが原因(犯人)に違いない」という特性要因図である。従って、列挙したもの全てに、最も疑わしいものから順に対策を講じてみることになる。

調査が上手なほど列挙する要因数は少ない。殺人事件で容疑者の範囲拡大を防ぐために初動捜査に力を入れるのは、周知の通りである。特性要因図に要因を多数列挙するのは、調査・検討のまずさを意味すると言える。

→ 目次

 誤った指導

次のような説明をするひどい指導があるので、要注意。

  1. 要因を70個ほど列挙しなければ特性要因図とは言えない。
  2. 「なぜなぜ分析」で要因を列挙する。
  3. ブレーンストーミングで要因を列挙する。

上の記事を説明しよう。

1)「要因を70個ほど列挙せよ」というのは、「砂の中からダイヤを探す」考え方である。つまり、結局はダイヤモンドは見つからず、列挙しても全部捨てるだけである。

列挙順序

正しいやり方は、要因を少なくすることである。
 最初は「最も疑わしい1~2の要因」だけ挙げて調査し、それらが原因ではないと分かったら「次に疑わしい要因」を挙げて調査し、次第に範囲を広げる。

2)「なぜなぜ分析」は、再発防止のために根本原因を追究する手法であって、要因分析、原因解析、特性要因図~等とは全く無関係な手法である。

参照 → なぜなぜ分析

3)「ブレーンストーミング」は、やり尽くして行き詰まったときの「わらをも掴む」活動であって、普通は行ってはならない。

 疑わしい要因がない場合

「疑わしい要因」が思いつかない場合は、データの収集と分析を繰り返すしかない。

アインシュタイン

当てずっぽうに要因を選んで層別や対策を講じてみる。失敗して元々だが、根気よく繰り返すうちに意外にも功を奏する。多数の失敗を重ねるうちに、次第に原因の範囲が狭まってくるからである。

CAPDサイクルは試行錯誤だからレベルの低い活動という印象を受けるが、実はノーベル賞の授賞者や優れた研究業績のある研究者の多くは、これを何度も繰り返して成功した人達である。

→ 目次

2-2. 原因解析

 原因解析とは

「疑わしい要因」(容疑者)を挙げ、原因(犯人)か検証することである。

QCサークルが扱う小改善で原因を証明するには、「対策を講じて効果が出た」ことを確認するのが早道である(対策先行型)。

対策が大きな出費を伴うとか、対策をして失敗したら取り返しが効かない場合は、先に原因を究明してから対策を講じる(原因確定型)。しかし、これは一般に大掛かりな調査を必要とするため、簡単な実験で済む場合を除き、QCサークルでは行わない。

検証方法の代表的なものは、次のデータから仮説を立てて対策を打ってみることである。

「もしかして、これが原因では?」と仮説を立てて対策を打って、効果が出れば「やっぱり原因だった」と検証される。効果がなかったら、「では、あれが原因かも」と別の仮説を立てて対策を打ってみる。これが、CAPDサイクルである。

大改善と小改善では、次の違いがある。

1)失敗しては困る場合:
「その事象が原因らしい」とのデータがあっても、本番の対策を実施する前にいろいろと予備的な実験をする(原因確定型)。つまり、用心深く石橋を叩く。

2)失敗しても困らない場合:
 QC活動のような小改善では、「疑わしい要因」にいきなり本番の対策を実施して効果を見る。失敗なら、元に戻すなり別の対策を考えればよいからである。ここが大改善と小改善の大きく違う点である。

原因を明らかにしてから対策を検討して実施するのではない。先に対策を打って、実施効果によって原因を証明するのである(対策先行型)。

〔参照〕 → 小改善と大改善の区別

→ 目次
 

2-3 QCサークルの場合

上に述べた要因分析(=要因列挙と検証)を現場の第一線担当者が実施するのは、ほぼ困難である。また、その必要もないといえる。

次の事例で考えてみよう。
 テレビのリモコンの電源ボタンを押してもONしなかった。故障の要因を全部列挙しなければならないだろうか。それは一般家庭でできるはずもない。では、何も手がつかないかというと、少しはできる。

現場観察

以上で解決しなければ、専門業者に修理に出す。つまり、QCサークルに求められている活動は専門的な知識ではなく、日常的な普通の行動である。従って、次のように考えればよい。

全ての要因を列挙して特性要因図を作成するという指導はダメである。作成しても役に立たない。そうではなく、「疑わしい要因」を1個とらえてCAPDサイクルを回し、手段が尽きるまで繰り返すのがよい。
 〔参照〕→ QCサークルへの適用

→ 目次
 

2-4. ウソ発表の実態

QCサークルの審査員で指導員資格を持ち、要因分析とは、ブレーンストーミングによって特性要因図に多数の要因を列挙することだと指導する人がいるものである。

そうやって70個、80個と列挙してどうするかというと、そのうちの「重要な要因と思われるもの」を3つほど選んで、要因検証をして、要因と認められれば対策を打つのだという。

次のような疑問を抱かないのだろうか?

  1. 重要な要因に対策を打つなら、なぜ、重要でない何十個もの要因を並べる必要があるのか?

  2. 普通、重要と分かっている要因は厳重に管理するから、対策を打てといわれても打ちようがない。

  3. 重要な要因であっても原因でないことがほとんどなのに、対策を講じて、なぜ、効果が出るのか?

このようなやり方で「成功した」とウソを発表するQCサークルは、かつて多数あった。何百ものサークルが、皆、このような発表にした。

実は、多くの場合、普段の仕事の中で何らかの事情で原因と対策が分かっており、その事実を隠して、あたかも特性要因図を作成して要因を多数並べて、そこから絞って原因を突き止めたかのようにQCストーリーに沿った話を創作したのである。

→ 目次
 

2-5. 指導例

指導例を吟味しよう。
 事例の詳細は不明であるが、ノズルから糊を吐出してダンボールに塗って箱を製造する工程について、「設備に付着した糊を清掃する時間」を短縮する活動である。

日科技連の細谷克也氏からの引用

のり付着の清掃時間が長い

特性要因図

字が小さくて読みにくいが、要するにこうだ。

  1. 現状把握から得た情報をもとに要因を洗い出し、

  2. 特性要因図に整理する。

  3. 重要な要因を選定して枠で囲み、

  4. 真の要因かどうか、検証する、

ここに、「真の要因」という聞き慣れない新語が出た。要因であると検証されたものをそう呼ぶらしい。しかし、たとえ要因であることが検証されても原因かどうかは不明だから、対策を講じても効果が出ることは滅多にないはず。
 何かカン違いをしていないか?

次に、重要な要因と考えた根拠を見ていこう。ここでは、一歩譲って「重要な要因」を「疑わしい要因」の意味と好意的に解釈する。

重要要因の選定理由(細谷氏)
(筆者が一部を省略)
重要要因 選定理由
付着量が多い 多いと清掃時間が長くなると考えられる
ノズル径が大 糊の吐出量が多いため付着するのではないか
ノズル径が小 糊のタレが発生すると考えられる
ガイド径が大 ガイドへの付着量が多い
糊が悪い 糊の特性が好ましくないのではないか

以上で、特性要因図を作成した意味がないことが明白になる。

1)「糊の付着量」とは、余計なところに付着する糊の量である。これは結果であって要因ではない。また、付着量が多ければ清掃時間が長くなるのは当然で、何ら検証の必要がない。

2)次のような要因を「重要要因」でないと判断した根拠の説明がない。従って、重要な(清掃時間に影響しそうな疑わしい)要因を選定したことにはならない。

  1. 糊の温度
  2. 吐出圧力
  3. 圧着時間
  4. 糊の種類
  5. 糊のメーカー

3)ノズル径が大きすぎる、あるいは小さ過ぎると疑うなら、最初からノズル径を少しずつ変えて見ればよいだけの話である。

最適ノズル径によってある程度の改善効果を得たら、さらに「もう少し何とかならないか」と、次に吐出圧力を変えてみる。このように、CAPDを繰り返せば済む。

4)もし、特性要因図に疑わしい要因を数個以上列挙するなら、溜め込み型の活動として、直交配列表を使った実験をするのが適切である。

→ 目次

3. 改善活動の5つの型

原因解析が、それぞれの活動タイプによってどう異なるか見ていこう。

下表の①②③を一括して「問題解決型」の活動という。原因を除去することによって問題を解決す津活動である。

小改善活動の5つのタイプ




原因確定型 原因確定後に対策
(大改善向き)
対策
先行型
逐次対策型 1個ずつ対策を先行
(小集団向き)
溜め込み型 複数要因を同時検証
(直交配列表活用)
課題達成型 仕事のやり方を設計
(原因除去できず)
施策実行型 原因・対策が既知
(小集団向き)
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3-1. ①原因確定型

原因を明確にしてからでなければ対策を検討・実施できないタイプの活動。失敗が許されない一発勝負の場合は、必ず原因確定型が採用される。

一発勝負だから本番でCAPDサイクルを回すことができず、入念に原因解析、そして対策を検討しなければならない。実験段階でCAPDサイクルを回すか、あるいは、相当の出費をして入念・詳細に原因や対策を検討する。

しかし、小改善では、原因解析で原因を明確にしてから対策を検討・実施するのは稀である。

QCサークルに原因の確定を要求すると「ウソ話の創作」に陥るのは、従来のQCストーリーで全国的な実績が示す通りである。慢性不良の場合でも、CAPDサイクルによる逐次対策型の採用を推奨したい。

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3-2. ②逐次対策型

「疑わしい要因」を1つ思いつくたびに対策を打って効果を確認する作業(CAPDサイクル)を繰り返すタイプの活動である。失敗が許される場合に採用する。QCサークルに最適のやり方である。

QCサークルは、事前に詳細・入念に研究する訳ではない。トライ・アンド・エラー(=CAPD)を繰り返す以外になく、目標も活動計画も立てることはできない。にもかかわらず、従来のQCストーリーを強いられて、ウソの目標と計画を発表した事実は周知の通りである。

逐次対策型の場合、特性要因図の作成に次の特徴がある。

  1. 1個の「疑わしい要因」を思いついたら、それを特性要因図に記載する。

  2. 対策を実施して効果が出たら、記載をそのままにする(枠で囲む等の印をつけるのも可)。

  3. 対策を実施して効果が出なかったら2本線で抹消し、次の「疑わしい要因」を特性要因図に記載する。

  4. 以下、同様に繰り返す。

  5. 活動終了後、特性要因図を工程設計部署(あるいは、業務管理規定を作成する部署)に提出し、参考に供する。

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3-3. ③溜め込み型:

直交配列表を使って複数の原因候補を同時に検証するタイプの活動である。複数の「疑わしい要因」があって、次のような場合に採用する。

  1. 「疑わしい要因」を1個ずつ検証すると、時間や費用の面で都合が悪い。

  2. 2個以上の原因候補の組合せで問題が起きると疑う場合。例えば、高温多湿、低温乾燥という組み合わせで影響が出そうな場合。

このタイプは、やり直しの効かない大改善の場合もあれば、出費の少ない小改善の場合もあり得る。直交配列表を簡便に使えば、QCサークルの活性化に役立つ。

参照 → 直交配列表

「疑わしい要因」をいったん特性要因図に溜め込んで、そこから検証すべき一式の要因群を選定して検証実験(原因分析)をする。

この実験では、量的要因なら実際の業務で変化し得る最大値と最小値、材料ならA材料とB材料で実験するので、どれかの条件で不良品の発生が再現されれば原因の検証になる。

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3-4. ④課題達成型

原因を問題にしても解決しそうもない場合、従来の仕事のやり方を廃止して新たに設計するタイプである。新たに設計するのは、作業手順、治工具、運搬具、その他である。当然であるが、職場の課長や工程設計部署の承認を必要とする。

新たに設計した仕事のやり方を実施した場合に、それで問題が完全に解決すれば終了する。しかし、何らかの問題が残ったら、ここで問題解決型や施策実行型の活動に切り換えて改善を継続する(CAPDを回す)。

→ 目次
 

3-5. ⑤施策実行型

原因候補や対策案について事前に見当がついている場合の活動であるが、いろいろなケースがある。

  1. 原因候補は、人によって意見が違うかも知れない。

  2. 原因が本当に分かるのは、対策を講じて効果が出た場合である。

  3. 効果が出たとしても完全解決でない場合は、他にも原因がある。

以上を反映した特性要因図と時系列折れ線グラフを作成して、疑わしい要因1個ずつ対策を検討し実施し効果をみる。

これは問題解決型の逐次対策型とほとんど見分けがつかない。唯一違う点は、原因や対策が事前に分かっている(積り)なので、事前に全部の「疑わしい要因」を列挙した特性要因図を作れることである。

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4. 疑わしい要因の層別

「疑わしい要因」はあるが、対策を講じることが結構大変で、「失敗しても構わない」として対策の実施に踏み切れない場合がある。

つまり、「限りなく原因に違いないと推測させるデータ」を何らかの方法で得られれば対策に踏み切れる。

こういう場合の原因解析のやり方を紹介する。

→ 目次
 

4-1. 棒グラフによる層別

塗装用ハンガーがある(下図参照)。図の状態で、円柱状の塗装素材が左右に合計8個、下のばねの反発力で持ち上げてハンガーに取りついている。

塗装用ハンガー

 不具合

取り扱い中に、この素材がバラバラに落下して不良品になる不具合に取り組むことになった。

5年前に操業を始めた頃は、それほど多くはなかった。従って、ばねにヘタリが生じたのではないか、というのが大方の関係者の認識であった。人によっては、「いや、作業の仕方が荒いのではないか」という意見もあった。

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 原因の検証

試しに、ハンガーをゆすったり持ち上げたり、いろいろと扱ってみたが、容易に崩れなかった。

ばねにヘタリが生じたと疑うなら、ばねを新しいものに交換すればよい。しかし、そうはいかない。何しろ、このようなハンガーは500本も使用されており、1本や2本に改良を加えても、改善効果を確認できない。500本のハンガー全部のばねを交換するのは結構な労力と費用を使うから、やって失敗だと悔しい。

ある日、メンバーの一人がアイデアを出した。
 塗装素材には4つの機種があって、重さがかなり違う。だから、「もし、ヘタリが原因なら、バラケの発生率は機種によって違うのではないか?」と言い出した。

そこで、日常の不良記録から機種別に落下率の棒グラフを描いた。データ(落下率)を要因(重さ)の水準(重さのレベル)で分けることを「要因の層別」という。

塗装棒グラフ

もし、ばねが十分な力で素材を押し上げているなら、落下率は素材重量と無関係のはず。だが、グラフは素材重量が増えると落下率が急激に増大することを示したので、明らかにヘタリが原因であると推測できる。

→ 目次

 対策

重量が増えれば落下率も増える関係は「新しいばねに交換せよ」というシグナルである。しかも、ばねの材質をピアノ線から弁ばねに変更して、ヘタリを予防した。

要因分析か? 原因解析か?:
 上の棒グラフによる要因の層別は、要因分析か? それとも原因解析か?

正解は原因解析である。次の理由による。

1)ばねのヘタリが要因であることは、検証せずとも分かる。ヘタリがあれば、素材がばらけるのは当然だから。

2)ヘタリが要因であることは分かっているが、「原因かどうか」が検証の対象である。もしヘタリがなければ素材の重さによって落下率が変化するはずがないから、変化したということは、現にヘタリによって素材の落下が起きていることが推測できる。

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4-2. 直交配列表の利用

「疑わしい要因」を1個ずつ層別して検証するときは棒グラフのような簡単な方法で済むが、複数の要因を同時に検証する場合には、直交配列表が便利である。特に、次のような場合である。

1)1個ずつ検証すると、時間や費用の面で都合が悪い。

2)複数の疑わしい要因の組合せで問題が起きると疑う場合。例えば、温度と湿度を別々に検証しても影響力は出ないが、高温多湿、低温乾燥という組み合わせで影響が出そうな場合。

疑わしい複数の要因を一度に層別する手段が直交配列表である。直交配列表による実験で、不良が再現されれば原因解析の有力な手段となる。生産工場は言うまでもないが、商店の売上、病院の患者数、その他で応用することができる。

ところが、直交配列表を解説している書物は「実験計画法」だけである。

これを勉強する人は限られて、一般には存在すら知られていない。大学の理科系学部でも、履修科目として選択する学生は少ない。まして、企業の作業者・下級・中級・上級職員などで直交配列表を利用する人は極めて少ない。

その原因は、直交配列表を分散分析・有意差検定・平均値の推定などの統計処理を前提に使うものとしている点にある。これだと、一般の人は数式を見ただけで頭が痛くなって手が出せない。

当研究所は、全く統計処理をせずに直交配列表を使うやり方をQCサークルに推奨している。それで何の問題もなく、コンピュータ・ソフトを使う必要もなく、きわめて便利に使える。知っている人には無用な説明だが、初心者のために例題を解説している。

参照 → 直交配列表

一度覚えれば目をつむっても使えるから、最初だけ丁寧に読んで頂きたい。


(第6章終わり)
→ 目次

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© 客観説TQM研究所 鵜沼 崇郎