設計FMEA 工程FMEA 故障モードと影響の解析 - 客観説TQM
このページでは、製品設計FMEA、および工程FMEAの導入の仕方を説明する。
FMEAとは?
「FMEA」とは、Failure Mode and Effect Analysis の略称であって、設計したシステム(製品・サービス・工程) に起こりうる故障モードとその影響を明らかにし、適切な対策が講じられたかどうか、一定のフォーマットに従って信頼性や安全性の合否を判定する手法・活動をいう。
ここに、「故障モード」とは、構造の破壊をいう。
対象となるシステムによって設計FMEA、工程FMEA、医療FMEAなどと呼び分ける。
このぺーで紹介するFMEAの手順は(下の表に示すように)洗練された最も簡便なもの。
品名 (アイテム) |
故 障 モ ❘ ド |
要 因 |
影 響 S |
対 策 |
個別 評価 |
総合 評価 |
|||||
影 響 度 a |
頻 度 b |
検 知 度 c |
積 | RI 判定 |
|||||||
ガスコンロ組 | 接続部 | ホース | ク ラ ッ ク |
経 年 変 化 |
ガ ス 漏 れ |
法 定 点 検 |
2 | 2 | 2 | 8 | 2〇 |
締めねじ | |||||||||||
バンド | |||||||||||
竹の子 | |||||||||||
工 程 名 |
故 障 モ ❘ ド |
要 因 |
影 響 S |
対 策 |
個別 評価 |
総合 評価 |
||||
影 響 度 a |
頻 度 b |
検 知 度 c |
積 | RI 判定 |
||||||
薬剤瓶詰工程 | ねじ蓋本締め | 60rpm 違反 |
ポカ | 蓋の緩み | ノックピン固定 | 4 | 1 | 1 | 4 | 1.6 〇 |
〔手順〕絶対評価4点法
- 対象となるアイテム(製品や工程の部位)を特定
- アイテムが決ったら、真っ先に起り得る故障モードを挙げる。
- その故障モードから、影響Sと要因(原因)を推測する。
- 対策状況(合格と判定する根拠)を記述する。
- 影響度a、頻度b、検知度cを個別に評価する。
- 総合評価によって合否を判定する。
FMEAの流派というかタイプというか、やり方の違いがあり、代表的なものを挙げると次のようになる。
タイプ | 採点 | 目的 |
相対評価法 | 10点 | 軍事用・宇宙開発用に開発された。 |
絶対評価法 | 4点 | 民生用に開発された。 従って、民生用の製品では起り得る故障モードである以上、リスクの高低を問わず「対策状況」を合格の状態にした上で合格を確認するために評価する(1回の評価)。 |
多くの企業で、TS16949(コアツール)の解説書やRPNを用いる相対評価10点法の解説書やセミナーでFMEAを学んで、納得できずに苦しんで形骸化している。その根源的原因は、相対評価10点法が軍事用・NASAの宇宙ロケット開発用にできていることにある。
大陸間弾道ロケットや宇宙ロケットは大量生産ではなく一品料理である。失敗や事故は大変な損害を生むし宇宙ロケットでは宇宙飛行士の生命の保証が重要になる。「試しに試作品を作って飛ばしてみよう」「試しに人を乗せて打ち上げてみよう」というような気軽なテストはできない。重大な失敗のリスクがないことを事前にトコトン調べ尽くさねばならない。従って、キズや汚れや騒音などはどうでもよい。爆発や軌道の異常などのハイリスクな事故だけを特別に扱う~という考え方になってくる。
しかし、民生用の製品では、多くの場合、気軽に試作品を作って気軽に失敗して、何だかんだやっているうちに新製品が出来上がる。事前に徹底的にリスクを調べて対策する必要性に乏しく、大陸間弾道ミサイルや宇宙ロケットで要求されるようなFMEAを実施する必要性に乏しいのである。
つまり、一般の民生品用に改善されたFMEAが必要になる。それが、このページで紹介する絶対評価4点法のFMEAである。
また、高リスク故障モードが起きないのは「当たり前品質」であって、それだけでは売れない。むしろ、外観とか騒音とか些細な欠陥の有無で売れ行きが変わってくる。従って、NASAの宇宙ロケット開発の考え方を改めなければならない。それが絶対法の考え方である。
特に、工程FMEAで、製品の不良項目を故障モードとすること(不良項目説)が普通である。
しかし、工程管理は何も品質だけのために行う訳ではない。納期・コスト・安全・環境保護の面でも管理しなければならない。従って、工程の構成要素である5Mの異常を故障モードとして(工程構造説)、納期・コスト・安全・環境保護への影響も評価するのが望ましい。このページの工程FMEAは、この考え方に沿ったものになっている。
工程構造説の考え方では、時間をかけて不良項目説のFMEAを実施しても、実際に工程を走らせると思わぬ不良が出る。従って、量産試作を繰り返して実際に発生する不良を解決した方が早い。その現状の問題を含めて、今後の工程の良好な状態をどうやって維持するか」、その検討方法が工程構造型である。
これだと工程を走らせながら工程FMEAと対策の検討がができる。
このページで扱う絶対評価4点法の設計FMEAは、自動車産業に限らず全ての業種に適合す汎用タイプで、無駄のない検討し尽くされた簡素な手法である。
絶対評価4点法で自動車産業向け ISO/TS16949 規格に適合するためのポイントも解説する。 → 特別に重要な故障モード(注2)