第11章 PDCAサイクル CAPDサイクル
QCサークル(小集団)のQC活動は、PDCAサイクル(又は、CAPDサイクル)によって行う。
〔注〕QCストーリーに従って活動し発表する~との考え方は誤りである。
〔理由〕QCストーリーを一度よく見よう。
目標を立て、計画を立て、要因分析をして失敗が許されない「一発勝負」で目標を達成する~というシナリオになっている。しかし、QCサークル活動は日常管理、すなわち、失敗が許される小改善であり、QCストーリーとは相入れない。入れない
→ QCサークル提唱者
→ 小改善と大改善の区別
PDCA(CAPD)サイクルは、あたかも何か難しいことをするかのように、一般に大変に誤解されている。ウエブサイト中には、
・PDCAサイクルは既に古い
・断言しよう、PDCAサイクルはもう時代遅れだ
~などと、知ったか振りをするニセモノの指導者もいる。
しかし、いずれもPDCAの意味を知らない人たちが犯す間違いである。
PDCAサイクルは、いわば試行錯誤であるが、だからと言ってバカにしてはならない。これは「七転び八起き」、「百折不撓(ひゃくせつふとう)」であって、多くのノーベル賞受賞者が採用してきたやり方である。
2015年ノーベル医学・生理学賞の北里大学の大村智氏は、熱帯地方の寄生虫が原因で起きる深刻な病気の治療薬となる新細菌を(PDCAサイクルを繰り返して)静岡県伊東市のゴルフ場の土の中から見つけた。
山中伸弥教授のiPS細胞の創造も同様、アインシュタインの研究成果を始めとして世界中のほとんどの優れた業績はPDCAから生まれている。
以上の認識の下、PDCAサイクルを研究しよう。
|
1.PDCAサイクルの歴史 2.手紙を書く事例 3.PDCAサイクルの原理 4.CAPD サイクル 5.QCサークルへの適用 6. 誤った指導事例 6-1.カオナビ 6-2.「あしたの人事」 6-3.野村総合研究所(NRI) 6-4.久野和禎氏 6-5.濱田金男氏 |
1.PDCAサイクルの歴史
以下、Wikipedia から引用する。
第二次世界大戦の終戦後、1947年、米国の統計学者であったW・E・デミングが来日し、日科技連で講演を行った。その講演を聞いた日科技連の幹部が次のようなPDCAを提唱したと言われている。
- Plan(計画):従来の実績や将来の予測などをもとにして業務計画を作成する。
- Do(実行):計画に沿って業務を行う。
- Check(評価):業務の実施が計画に沿っているかどうかを評価する。
- Act(改善):実施が計画に沿っていない部分を調べて改善をする。
4段階の最後のActを次のPDCAサイクルにつなげ、螺旋を描くように1周ごとにレベルを向上(スパイラルアップ、spiral up)させて、継続的に業務を改善する。
デミングがどのような講演を行ったか知る由もないが、PDCAサイクルの内容の提唱者がデミングではなく日科技連の幹部(実務に疎い素人)であったことに注目したい。
結局、PDCAサイクルは、次の二つの大きな欠陥を抱いたまま実務に導入され、大きな弊害を招いた。
- PDCAの内容の説明が下手(へた)で、これを読むと現在でも「計画」とは日程計画であり、日程が遅れたら是正することだと誤解する人もいる。
- 失敗が許されない大改善向きか(誤)、それとも、失敗が許される小改善向きか(正)~という重大な違いの認識を欠いている。
現在でも、学者の多くはこの点を誤って認識をしている。→ 学界の現状 - 上に示したPDCAサイクルは、新たに業務を計画する場合であるため、P(Plan)から始まっている。
しかし、既に業務が進行中で、現状に問題がある場合はC(Check)から始める CAPD とする必要がある。QCサークル(小集団活動)の大半は、この CAPDサイクルを行うべきケースである。
以上の認識があれば、いわゆるQCストーリーを小集団活動に適用するという誤りを回避できたと思われる。
〔注〕池澤辰夫氏(早大名誉教授)は、著書「品質管理べからず集」において、QCストーリーから目標の設定を除外している。このページも同趣旨である。
2.手紙を書く事例
小集団活動のような小改善は、失敗が許されるから、PDCAサイクルを繰り返して行う。すなわち、「失敗してもいいから、試しにやってみよう」を繰り返す活動である。
日常、無意識に誰でもやっている簡単な例を紹介しよう。
目の前に数本のボールペンがあるとする。その中の1本を使って手紙を書くシーンを想定しよう。PDCAサイクルの繰り返しは、次のような手順になる。
- P(Plan)問題の処置の仕方を決める(計画)。
→ このボールペンで書いてみっか。 - D(Do)計画を実行する。
→ 書いてみたっぺな。 - C(Check)結果を確認する。
→ インクが乾いて書けねえだよ。 - A(Action)問題の処置の仕方を検討する。
→ んだば別のボールペンでやってみろや。
- P(Plan)別のボールペンで書いてみっぺ。
- D(Do)書いてみたど。
- C(Check)やっぱしダメだっぺな。
- A(Action)んだばあのボールペンにしてみろや。
- P(Plan)んだな、そうすっか。
- D(Do)やってみたっぺな。
- C(Check)今度はうまくいったべや。うひひ。
~という具合に、失敗が許される改善活動において、手段が尽きるまで試行錯誤を繰り返す(目標を達成するまで繰り返すのではない)。
3.PDCAサイクルの原理
上の簡単な事例を図的に表すと、下図のようになる。

P(Plan):処置の仕方を決める
一般に「計画」と呼ばれるが、それから受ける印象は、日科技連の幹部が提唱した「業務計画を作成する」につながって誤解を生んでいるが、実はそのような意味ではない。
正しくは、どのようなことをして問題解決を図るか、対策となる行動の決定である。上の具体例では「手紙を書く」という問題を解決するために「いつ、誰が、何を、どのように行うか」ということである。
しかし、先々の予定は立たず、目先の行動の計画にとどまる。
D(Do):処置を実行する
「計画に沿って業務を行う」という文章から受ける印象は、物々しい計画書に沿った活動を連想して誤解されるが、正しくは「次は何をするか」を決めるだけである。
C(Check):現状の把握
日科技連の幹部が提唱した「業務の実施が計画に沿っているかどうかを評価する」という説明は不適当である。
正しくは、「行った処置の効果」がどうか点検することである。
A(Action):解決策の検討
日科技連の幹部が提唱した「実施が計画に沿っていない部分を改善する」という説明も不適当である。
正しくは、「現状に問題があるなら、放置せずに解決策を検討せよ」ということである。
現状が満足なら活動は終了するが、問題があっても手段がなければ終了である。
〔注〕目標を達成するまでPDCAサイクルを継続するのではない。手段がなければ、継続のしようがない。ただし、「手段がない」と、簡単に放棄してはならない。粘り強く工夫して、解決策をひねり出す努力と才能がモノをいう。
4.CAPDサイクル
上に述べた「手紙を書く事例」を「順調に書いている途中で突然に書けなくなった場合」に置き換えてみよう。
その場合は、次のようにCAPDになる。
- C(Check)ボールペンが書けなくなった。
- A(Action)別のボールペンではどうか。
- P(Plan)別のボールペンで書いてみよう。
- D(Do)書いてみた。
- C(Check)やっぱり書けなかった。
- A(Action)さらに別のボールペンにしては?
- P(Plan)別のボールペンで書いてみよう。
- D(Do)書いてみた。
~という具合に進む。これをCAPDサイクルという。従って、サイクルの回し方には、次の2通りがある。
- 新たに業務を開始する場合:
P から始めて P → D → C → A → P...と進める PDCAサイクル - 既に行われている業務の改善の場合:
C から始めて C → A → P → D → C...と進める CAPDサイクル
QC活動は現状の改善だから、CAPDサイクルになることが多い。
〔注〕
1. 「CAPDサイクル」をPDCAサイクルと呼んでもよい。広い意味ではPDCAサイクルに属するからである。
2. 方針管理の研究段階で行う試行錯誤は、新企画としてPDCAサイクルの場合が多い。
QC改善などの小改善は、目標を定めて達成する活動ではない。手段が尽きるまで CAPDサイクルを繰り返す活動だから、終わってみなければ成果は分からない。従って、小集団(QCサークル)活動では目標を設定しないのが正しい。
5.QCサークルへの適用
QC活動の正しいやり方は、次のようなCAPDを繰り返す活動である。

(C)現状の把握:
気に入らない。もう少し何とかならんかな。
(A)原因推定と対策に立案:
もしかしたら,これが原因かも知れない。この対策を打ってみたらどうか。
(P)対策の決定:
よし、その対策を打ってみよう。
(Do)実施:
やってみた。それで、結果は?
(C)現状の把握:
う~ん、もう少し、何とかならんかな。
~以下、同様に進めれば、原因分析になる。
誤った指導を受けた人々は、QCストーリーに従って、要因分析のときは一斉に要因を列挙し、対策の立案では一斉に対策を立案し、原因分析(効果の確認)では一斉に原因分析だけをするのが正しいと思うかも知れないが、そうではない。
〔注〕QCサークル活動で目標や計画を立てることのできる唯一の例外は、普段の業務の中で試験的に対策を講じる等によって「実現可能な手段を知っている場合」である。この場合、本番で達成すべき目標を設定することができる。
この場合は、為すべき事項や効果を知っているから、目標や活動計画を立てることができる。
しかし、QCサークル活動は本来の業務の合い間に行うので、活動計画が優先する訳ではなく、立てる必要性はほとんどない。
詳細 → QCサークル活動手順
6.誤った指導例
日科技連の幹部が提唱したPDCAサイクルの間違いが今日に至っても各方面に影響していることが、以下に紹介する指導事例にみられる。
以下、指導的立場を取っているwebサイトから、疑問に感じる指導例を拾ってみよう。
6-1.カオナビ
PDCAの導入には3つのメリットがあります。
- 目標・やることが明確になる
- 行動に集中しやすくなる
- 課題や不足が分かりやすい
そのようなメリットがあるとは考えられない。PDCAサイクルは、単に試行錯誤を繰り返すだけの単純な行動であり、単純であるからこそ粘り強く繰り返すことができる。
「目標・やることが明確になる」などということは全くなく、最後までどうなるか分からないのがPDCA(試行錯誤)である。
6-2.あしたの人事
「PDCAは古い?時代遅れ?」と題するウェブサイト「あしたの人事」から引用する。
〔PDCAの具体的な手法〕
Plan(計画)では、目標を設定し、それを達成するための実行計画を策定します。
誤りである
「目標を設定して、それを達成する計画が立つ」なら、何もPDCAサイクルなどに頼らずに、一発勝負で行えばよいのである。
目標が立たず、まして達成計画が立たないからこそ、PDCAサイクルを行うのである。
PDCAサイクルでいう "Plan" は、「失敗してもいいから、誰が、いつ、何を、どのようにやってみよう」という試行計画であって、目標達成の計画ではない。
さらに引用文は次のように続く。
〔改善に時間がかかる〕
PDCAは、計画、実行、評価を経て改善を行うという手法です。
改善アイデアを思いついた時点ですぐに実践するというわけではなく、計画と実行に対して評価を行なってから改善に取り組むことになります。そのため、どうしても改善を反映するまでに時間がかかってしまうのです。
また、改善の後にも同じ問題があります。考案した改善案が本当に効果的なのかどうかを検証するには、計画、実行、評価というプロセスを繰り返さなければなりません。
全くの間違いである。
「改善に時間がかかる」などということは全くない。
「対策を思いついた」ということは、Aの段階にある。
- A:対策を思いついた
- P:よし、これをやってみよう。
- D:やってみる。
- C:結果をみる。
これのどこに時間がかかる?
6-3.野村総合研究所(NRI)
〔PDCAサイクルの回し方〕
PDCAサイクルの各プロセスにおいて、一般的に何が行われるのかを見ていきます。
(1)Plan
目標を設定し、実行計画を立案します。
その際、ただ闇雲に目標を立てたり、過去のやり方を踏襲した計画を立てるのではなく、なぜそのような目標を立てるのか、なぜそのような実行計画を立てるのか、自らの仮説に立脚した論理的なPlanである必要があります。
「目標を設定し、実行計画を立案します」という考え方が誤りであること、上述の「あしたの人事」と同様である。
PDCAは、なぜ「サイクル」なのか? を考えれば、P(計画)の意味を理解することできる。
すなわち、目標を設定して達成のための実行計画を立てることができるなら一発勝負で決着すれば済むから、PDCAサイクルにはならない。願望(ビジョン)を実現する手段が不明で、実施しても成功するかどうか不明な「試しにやってみたい行動」がPDCAである。
このことは、計画時に目標が立たないことを意味する。
6-4.久野和禎氏
〔断言しよう、PDCAサイクルはもう時代遅れ〕
PDCAは実際にうまく回っているのでしょうか?
私自身の例を振り返ります。私は長いこと外資系にいて外国人の上司などが「PDCAをしっかりやるんだ」と言うので、「そういうものか」と思いながらやっていました。
素直な私は、一生懸命PDCAを回そうとします。自分がリーダーのプロジェクトでも、できるかぎりしっかりPDCAを設計して、それに沿って仕事を進めました。しかし、パフォーマンスは自分が期待するほどには上がりませんでした。
何度かやっているうちに気がついたことがあります。それは、どんなに丁寧にPDCAを設計しても、「実際にプロジェクトが始まるとPDCAを無視しても問題なく進む!」。むしろ、PDCAにこだわると、プロジェクトが前に進みにくくなる、ということです。
完全なる誤解である。
「PDCAを無視しても問題なく進む!」のであれば、何をすればどういう結果になるか分かっている~ということだから、最初からPDCAをするする必要がなかった。にもかかわらず、知識不測のために誤ってPDCAをしようとした~だけのことである。
つまり、自称「プロコーチ」がPDCAサイクルの適用を誤ったというだけの話である。PDCAサイクルが、当たり前の、しかも極めて優れた手法であることに変わりはない。
6-5.濱田金男氏
〔QCサークル活動の現状と問題点〕
(前略)
従来からQCサークル活動は、下図のようなステップで進めるように指導されてきました。
素人の見解であることを考慮しても、全くひどい間違いである。
QCストーリー全体が1回のPDCAであるとするこのような学説は全く存在しない。また、濱田氏以外のそのような指導例も見当たらない。
特に、現状把握を “Plan” とし、歯止めと反省を “Action” だと考える専門家はいないと思う。
QCストーリーとCAPDサイクルを対比させるなら、下図のようになると理解するのが正しい。

All rights reserved.
© 客観説TQM研究所 鵜沼 崇郎
