2-1. FMEAの由来
FMEAの始まりは、米国の「大陸間弾道ロケット」や「有人月旅行アポロ計画」など、軍事・宇宙開発に深く関係する。
2-1-1. FMEA発祥の事情
アポロ1号
(3名死亡)
大陸間弾道ロケットやアポロ計画では、一発の実験用の打ち上げが失敗すると2兆円もの損害を生む。本番の失敗が大損害になるのは云うまでもないが、研究用の実験ですら失敗は大変に高くつく。
しかも、ほぼ一品料理である。「何台も作っていろいろな試験をする」という訳にはいかない。実験だとしても失敗が許されず、とにかく1台作るたびに、その1台が大過なく役目を果たすことが必要なのある。
こうなると、考えることはただ一つ。「汚れ・キズ・騒音・デザインなどはどうでもいい、大事故にならないものを一発で作れ」ということになる。FMEAはこのような要請に応えるために研究され、実施され始めたのである。
2-1-2. 伝統的なFMEAの特徴
チャレンジャー号
(8名死亡)
上述のFMEA発祥の事情により、伝統的なFMEAは次のような特徴を持つ。
- きわめて重大な影響を生じる故障モードを対象にする。
- 極めて頻度が高い故障モードを対象にする。
- 設計時に予測が極めて困難な故障モードを対象にする。
- 上に該当しない欠陥は、FMEAでは扱わない。
わが国でも多くの企業で教育され実施されているAIAG、VDA、TS16949などの世界的な規格が推奨するFMEAは、大方この流れに沿っており、形骸化の傾向にある。なぜ、形骸化するか?
2-1-3. 伝統的FMEAの問題点
伝統的色彩のFMEAは、民生用の製品には不向きである。
トップページ〔問題7〕の正解:5(民生品に不向き)
- 重大とはいえなくても、売れ行きに影響する故障モードは全て対象とすべきある。
- 設計時に検知できなければ重大リスクとするのは不合理(民生品では、販売後の定期点検やメンテで大事至る前に検知し解決すれば十分である)。
- ハイリスクの故障モードを選び出すための評価を行い、対策を講じ、再度その効果を見るために評価をし、2回以上の評価を行うことになる。
- TS16949(コアツール)の解説書やAIAG/VDA規格に準拠したRPNを学んで、納得できずに苦しんでFMEAが形骸化する。
- 影響度、頻度、検知度を10点満点で評価する作業は、基準のあいまいさもあって、極めて困難である。
問題の根源は、「相対評価10点法」が軍事用・NASAの宇宙ロケット開発用にできていることにある。
軍事・宇宙開発の分野での開発では「試しに試作品を作って飛ばしてみよう」、「試しに人を乗せて打ち上げてみよう」という気軽なテストはできない。重大な失敗リスクがないことを事前に徹底的に調べ尽くさねばならない。従って、キズや汚れや騒音などはどうでもよい、爆発や軌道の異常などのハイリスクな事故だけを特別に扱う~という考え方になってくる。
しかし、「民生用の製品」では、多くの場合、気軽に試作品を作って気軽に失敗して、何だかんだ改良しているうちに新製品が出来上がる。事前に徹底的にハイリスクだけを抽出して他を放置する必要性に乏しく、大陸間弾道ミサイルや宇宙ロケットで要求されるようなFMEAを実施する必要性に乏しいのである。
また、「民生用の製品」では、高リスク故障モードが起きないのは「当たり前品質」であって、それだけでは売れない。むしろ、外観とか騒音とか些細な欠陥の有無で売れ行きが変わってくる。従って、「宇宙ロケット開発」の考え方を改めなければならない。
つまり、一般の民生品用に改善されたFMEAが必要になる。それが、このページで解説する「絶対評価4点法」のFMEAである。
2-2. 絶対評価法の手順
起り得る全ての故障モードについて、十分な対策状況にあるかどうか評価し、合否を判定するやり方である。
2-2-1. 絶対評価法の特徴
| 対策状況 | 点数 |
| 不可 | 4 |
| 不満 | 3 |
| 実用可 | 2 |
| ほぼ完全 | 1 |
起り得る全ての故障を上列挙した上で、各故障モードの対策状況の合否を判定するだけなので、4点評価という簡単な評価方法をとることができる。
次のFig-Aに示すように、絶対評価法では無駄のない簡素なFMEAを実施する。
2-2-2. ガスコンロの事例
Fig-Aは、家庭用のガスコンロに絶対評価法の設計FMEAを適用した事例である。以下、これに沿って手順を説明する。
Fig-A:ガスコンロの設計FMEA(再掲)