![]() | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
はじめに 小集団の事例発表は、真実でなければならない。なぜなら、事例発表は小集団の相互啓蒙が目的であり、虚偽の発表は参考にならないからである。 しかし、従来各所で行われる事例発表会で虚偽発表が行われ、コンプライアンス習慣が崩壊している事例も見受けられる。 そこで最終回として、以下、虚偽発表のメカニズムに迫り、小集団活動の本質に立ち返ってその防止を図ろうとするものである。その意図は、客観説の手順なら虚偽発表のメカニズムは解消することを主張する点にある。 | ||||||||
![]() | ||||||||
小集団活動の改善事例発表における虚偽発表に関しては、 従来から社会的事実として様々な意見がある。
| ||||||||
![]() | ||||||||
小集団活動のQCストーリは、小集団活動の本質に照らして論じなければならない。結論として、
QCサークルについて、表のように説明されているが、その本質は「職場内グループによる日常管理」であり、小改善が中心である。 その前身ともいうべき日常管理グループは昔から存在し、職場で何か問題があれば関係者が集まって情報を交換して対処していた。 小集団活動の本質が日常管理であることから、次のような様々な要請と特徴が出てくる。 | ||||||||
![]() | ||||||||
1.許可不要の要請から、小改善である。 2.日常管理に、重点管理の適用がない。 3.小改善は活動理由がなく、発表理由のみ。 4.日常管理は期限がなく、大日程計画は作成しない。 5.目標の設定がなく、達成率の計算もない。 6.要因分析は、次のタイプがある。
| ||||||||
![]() | ||||||||
従来は 「テーマの選定理由」 として、 ●ワースト3に属する ●方針管理の一環として取組んだ などの「取組んだ理由」を説明する習慣であったが、虚偽発表となりやすかった。なぜなら、理由がないのが通常だからである。
正しくは、 このように、小集団活動の本質に根差した活動手順(客観説)では、虚偽発表のメカニズムは見当たらないのである。 | ||||||||
![]() | ||||||||
テーマ選定の関連し、発表ついて「全員参加」の適用が問題である。 すなわち、従来は「全員参加なのだから、全サークルが発表しなければならない」と説明されたため、テーマを持ち合わせないサークルは虚偽のストーリーをでっち上げたのである。 しかし、発表は相互啓蒙のために行うもので、参考になるような事例がなければ発表しないのは当然である。 | ||||||||
![]() | ||||||||
現状把握とは、何を把握するのか? 主観説は、現状の「悪さ加減」を把握して改善活動のエネルギーにし、これで挑戦心が湧き、高い目標を立てる。しかし、成果を発表する段になると低い成果を発表できず、虚偽の成果を発表するメカニズムが生まれる。 しかし客観せつによれば、現状把握は現品の特徴、特性値のグラフの変化~などのデータ収集であり、その観察から攻め所(要因の範囲)を絞ることであって、少数の根拠ある要因のみを列挙するための準備活動であると考えられる。 | ||||||||
![]() | ||||||||
主観説は、 目標が高い=挑戦心が高い 目標に根拠は不要(どのようにも設定が可能) であるとしている。つまり、目標に体裁が入るから達成率にも体裁が入り、虚偽発表のメカニズムを構成する。 しかし客観説では、目標は投資額や結果の蓋然性及び最善性を保証するために設定するものであり、小改善には目標の設定を求めず、故に達成率も問題としない。 | ||||||||
![]() | ||||||||
日常管理は通常、期限なき活動であって、大日程計画は立てずに小日程計画だけで賄うのが普通である。
しかし主観説は「大改善・小改善」の区別をしないため、小集団活動にも期限を設けて大日程計画を作成することになり、虚偽の計画の構造を作ることになる。その事例を次の(8-2)で見ることにしよう。 | ||||||||
![]() | ||||||||
これは第2回発表の参考資料である。
| ||||||||
![]() | ||||||||
客観説は、不良低減活動で、次の3つのタイプを区別する。
| ||||||||
![]() | ||||||||
主観説は挑戦の対象を目標と考えるので、目標が高くなり、達成率も高くしないと体裁が維持できない。ここに、虚偽の達成率を発表するメカニズムが生成する。
しかし客観説では、小改善に目標を設定しないので、目標達成率もない。 | ||||||||
![]() | ||||||||
従来の実務習慣では、QCストーリーに沿って各ステップの記入欄を設定した用紙を作って配布し、これに事例発表の内容を記載させている。これが虚偽発表の大きな原因になる。 ステップを省略することも順序や内容を変更することも許されないため、非常の多くの事項について虚偽発表をせざるを得ない実情である。 客観説では定型用紙を使用せず、あくまで真実の発表を要求しつつ簡素なQCストーリーを貫徹することになるので、虚偽発表のメカニズムは激減する。 | ||||||||
![]() | ||||||||
推進事務局などが、小集団活動の活動の仕方や事例発表について審査基準を作成することがある。その目的は、適正な審査、個公平な審査を通じて活性化することにある。 しかし、「虚偽発表であってもその基準を適用するのか?」との質問への回答を用意していないし、真偽の審査もしない。 従って、「虚偽発表のマニュアル」を与える結果となり、小集団活動を単なる飾り物にすることになる。 事例発表会は、活動をする人たちが相互啓蒙の目的で参考になる事例を紹介しあう場である。 故に、参加集団の間で相互に評価すべきであって、活動もせず事例を参考にしない審査員を選任して評価させるというのは制度目的にそぐわない。 | ||||||||
![]() | ||||||||
客観説の小集団活動は、非常に簡素な手順になる。しかし、5つのタイプを使い分けるという、ある意味では難問がある。そこで、タイプを選定の表を示す。 まず、テーマに取り掛かかった初期の段階で、「原因が既知」、「原因不明」、「原因不問」 を判断する。不明の場合はさらに3つに分かれる。 次に、1つのテーマの中にいくつかの活動タイプを持つ場合の例を示す。いま、ある製品の製造工程の不良率を低減する活動で、「汚れ」 「すりキズ」「ダコン」「曲がり」「長さのバラツキ」という5個の不良項目を扱うものとする。 | ||||||||
![]() | ||||||||
「汚れ」は A~E の要因が考えられたが、どれも無管理状態だったので、全てに対策を講じた(事後予防型)。 しかしそれでも「汚れ」が減らないので、「原因を取り除く活動」に移り、要因FGHを挙げた。それぞれに小改善案があったので、要因FGHの全てに対策を講じた(対策先行型)。 「すりキズ」は要因Jが原因であることが分っていたので、若干の出費はあったが対策を講じた(施策実行型)。 このように、同一のテーマの中で異なる活動タイプをとるのはごく普通であることを教えないと、活動タイプを偽って発表するメカニズムが発生する。 | ||||||||
![]() | ||||||||
「むすび」これまでの4回の発表を振り返る。
以上をもって、一連の発表を終わりとする。 |