(c)絶壁型
 選別した場合に起きる分布である。合格ロットであっても、出荷には支障ないが、生産工程は改善を要する。


type-c

(d)高原型
 平均値が僅かに異なる数個のロットが混ざった場合の分布である。この場合は3ロッと程が混ざっているように見える。

type-d

ロットごとに層別した上でヒストグラムを作って、平均値が変化する原因を追究する必要がある。
 → 二山の例

(e)ふた山型
 高原型の特殊な場合である。平均値の異なる2個の分布が混入した場合の分布である。この図は一見して二山と分かるが、平均値が接近すると高原型に見え、一方の山が低いと単なる変形山に見るので注意を要する。

type-e

層別ヒストグラムで、平均値や標準偏差の異なる分布が混ざっていると分かったら、原因を追究する必要がある。

(f)離れ小島型
 異なった分布のデータが僅かに混入した場合の分布。理屈は簡単だが、見つけにくい点で一番の難物であり、一番解消の必要性が高い。

type-f

離れ小島を避けるためには、多くの機会に、大量のデータでヒストグラム作成して診断する必要がある。

離れ小島の原因として、次のようなものがある。

  1. 段取り時の試作品を「チョイ置き」で混入
  2. 型交換時に前型品を「チョイ置き」で混入
  3. 不良品を、故意または過失で混入
  4. 余った製品を在庫し、次回ロットに混入
  5. 作業指導で作ったワークが混入
  6. 落下品を拾って混入

標準偏差の計算がパソコンに奪われた現在、ヒストグラムの意義はもっぱら「ふた山」や「離れ小島」の発見にある。

3.工程能力指数 Cp、Cpk

Cp によって、バラツキの大きさが規格幅に対して妥当かどうか、判定します。

Cpk によって、バラツキの大きさと平均値が規格の上限値と下限値に対して妥当かどうか、判定します。

なお、ヒストグラムから、平均値、標準偏差、Cp、Cpk等を計算するオンラインソフトを利用することができる。
 → 度数分布の計算

ヒストグラムを介しないで、直接データを投入して、平均値、標準偏差、Cp、Cpk等を計算するオンラインソフトを利用することもできる。
 → 度数分布の計算

Cp、Cpk の意味をよく理解するには、この後に説明するように、自分でExcelを使って計算するのが最善である。

(1)Cp(シーピー)

工程能力指数Cpとは、規格幅に対する「データのバラツキの余裕」を示す指数である。
  工程を診断するには、まず、バラツキの巾が広くないか、診断せよ。

〔第3-2図〕
qc3-2

3-2 図の山の形をした図形は「ガウスの正規分布曲線」と呼ばれるもので、理想型ヒストグラムを代表した図形である。

記号の意味
   規格下限値:SL
   規格中央値:SC
   規格上限値:SU
   標準偏差:σ

Cpは、分布の平均値μと規格中央値SCが一致するかどうかを問わずに、標準偏差(ばらつきの大きさ)のみを問題とする。

1.標準偏差と平均値を表す文字は、2種類ある。

2.数学上の理論値の場合は:σ、μで表す。

実際のデータから求めた場合はs-x-bar で表す。

x-barを、エックスバーと呼ぶ)。

これら平均値と標準偏差の Excel による計算方法は、このページの最後 に示してある。

第3-2図に戻る。

〔第3-2図〕(再掲)
qc3-2

正規分布を前提にすると、データの存在範囲は99.7%が「μ±3σ」の中に入り、ここから外側に外れるデータは、1,000個中の3個ほどしかない。

従って、「μ±3σ」と規格の上限・下限が一致すれば少し安心できる。この状態を次のように表す。

工程能力指数:cp-1

しかし、この状態は余裕がなく、少しの変化ですぐに規格外のデータが発生しかねない。そこで両側にもうσだけ外側に規格の上限・下限を置けば安心である。この安心できる状態を次のように表す。

工程能力指数:cp-133

つまり、Cpの値が1.33以上なら、バラツキ幅に関する限り安心できる。
 実施例 → トヨタの事例

(2)Cpk(シーピーケイ)

Cpk とは、現実のデータの平均値が規格の中央からずれている場合の、規格幅に対するバラツキの余裕を示す指数である。

平均値:μが、規格中央値:SCからδだけずれている場合を第3-3図に示す。

〔第3-3図〕
qc3-3

この場合、余裕が減った側(危険な側)、この図では左側の片側規格巾が、次のように減ったことになる。

デルタ

故に、左半分について計算する。

cpk

これが、1.33 以上でなければ安心できないことになる。

(3) データ数nによる修正

データの数は、何個あればいいの?

CpにしろCpkにしろ、もう1つ問題がある。何個のデータが必要か?

今までの話はガウスの正規分布という数学の理論であって、データ数が無限にあるとの前提に立っている。従って、現実の有限のデータから計算する工程能力指数は 1.33 では足りないのだ。

そこで、専門家の末武先生の指導を受けて、第3-4図グラフを得た。

〔第3-4図〕
末武

n=100個ほどのデータなら、1.5以上
 n=20個ほどのデータなら、1.8以上
~という具合に大きなCpとCpkが必要になる。

(4)平均値の計算

Excel で平均値を計算する。

母集団のデータ数は無限であるが、この中から有限のサンプルデータを得たものとして、範囲 (D2~D13) に列挙してある。

使用する関数=AVERAGE

平均値

(5)標準偏差の計算

Excel で平均値を計算する。上と同じデータである。

使用する関数=STDEV

標準偏差

(終わり)


All rights reserved.
© 客観説TQM研究所 鵜沼 崇郎