客観説TQM研究所のホームページを開設した目的を説明します。
品質管理の理論は、換言すれば「実務のやり方の理論」である。だから、実務で役立つかどうか実効性を検証する必要がある。実務は千差万別なので、実務経験が豊富な人でないと検証もできない。
ある「活動の手順」を大学と企業が共同で検証し、「何型QCストーリー」と命名した、という話を耳にする。
しかし、実務はそう単純ではない。将棋の試合のように1回1回が似ても似つかぬコースを辿って勝敗に至る。ある指し方(戦法)を1回行して「勝った」 からとて、「検証されたQCストーリー」と信じ込むのは一部の学者の妄想です。
実務経験は自身が 20年~30年 と取り組まねばならない。大学の研究者には、実務経験も検証もできない。このことは品質管理の大学教授には品質管理の実務経験がないことを意味し、医学の分野でいえば「外科手術の経験がない外科の教授」に相当する。
その結果、もたらされる弊害は、眼を覆うべくもない。1970年代にTQC隆盛を極めたが、1980年代に相当数の企業がTQMやQCサークルからを撤退した事実を考えよう。その主な原因は、役に立たない品質管理の理論にある。TQC(TQM)が真実に改善成果をあげる活動であったなら、撤退するワケがないからである。
以下、詳しく説明しよう。
TQMの中核を占めるQCサークルと方針管理について、問題点を概観しよう。
「QCサークルは、QCストーリーに従って活動し、発表しなければならない」という。
ところが、そのQCストーリーの内容を見ると、一発で成功しなければならない。何をしたらよいか分からないうちに目標を立てねばならないし、活動計画も立てねばならない。こういう至難の技を現場の作業者に「やれ」というのである。
正しくは、一発勝負ではなく、PDCA(CAPD)サイクルで行うようにするべきである。
従来の小集団活動は、次のような手順を踏む「主観説を中心とする古典品質管理」であった。
右手で「データでモノを言え」と指導しつつ、左手では「カンでモノを言え」と矛盾を指導したのである。
カンで設定しカンで立てた計画が、なぜか不思議もピタリと当たる。カンで列挙しカンで絞った要因に対策を打てば、なぜか不思議に効果が出る。これは「予言ごっこ」に他ならない。
「方針管理は、PDCAサイクルを回して行え」という。10億円かけて実行し、失敗したら、反省してさらに10億円かけてやり直す。これを繰り返せというのである。
正しくは、一発勝負だからやり直しは効かず、PDCAサイクルの適用はないと指導するべきである。
「FMEAは、ボトムアップ手法である」と指導される。ところが、具体的な手順の話になると、話は逆になる。次のように、反対のトップダウンを指導するのである。
そして、故障モードの欄に故障を記載するという奇妙な指導が平然と行われてきた。
他にも、「なぜなぜ分析」の問題がある。
「なぜ」を繰り返しても真因が(true cause)分かるはずもないのに、「なぜ」の繰り返しを説く指導が横行している。それでいて、根本原因(root cause)は全く問わない。そもそも、真因と根本原因の違いも分からない指導者が横行している。
以上のような古典品質管理から早く脱却して新しい第一歩を踏み出すべく世に問うことが、当ホームページの目的である。